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2016年9月14日水曜日

The Ship : Brian Eno



今年4月にリリースされた Brian Eno の新作は「Lux」以来4年ぶりとなるが、本作ではタイタニック号の沈没をモチーフにしているとのこと。また、今年1月に逝ってしまった盟友 David Bowie に捧げられている模様。1曲目のタイトル曲は21分にも及び、穏やかな大海を想起させる。2曲目は3章で構成された組曲形式であり、美大生の頃にインスパイアされたという The Velvet Underground の「I’m Set Free」がカバーされている。

全編に渡り壮大なるアンビエントに支配されたアヴァンギャルドな実験作品ではあるが、それは現代における我々の心象風景を表現しているかのよう。冒頭では静かな船出を連想させたが、中盤のポエトリー・リーディングやスポークン・ワードの導入によって流れは変わっていく。それはまるで船頭の舟歌のようで、混沌と無秩序に支配された我々の不安を煽る。北海に霧がかったようなサウンドスケープが展開される中、終盤を引き継ぐのは天からの光のように我々を救済する「I’m Set Free」だ。これまでの Eno 作品のどれとも似ていない、物語性と連続性を感じさせる野心作であり、新たなる地平へと踏み出した大いなる一歩と取れる作品だ。

Tracklist 

01. The Ship 
02. Fickle Sun 
(i) Fickle Sun 
(ii) The Hour Is Thin 
(iii) I’m Set Free

2014年7月29日火曜日

High Life : ENO • HYDE

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Someday World(過去レビュー)から僅か2ヶ月後にリリースされた ENO・HYDE の2ndアルバム。1stのアウトテイク的なアルバムなんだろう、と高を括っていたら、いやいやお二人を軽く見くびっていました。すいません。前作とは違う作風かつプロジェクトの骨子が明らかになっており、二人の叡智が高次元で拮抗しておりました。今回はボーカル控え目、生演奏重視の即興音楽となっており、カール・ハイドは素晴らしいカッティングギターを弾きまくっています。

そもそもこのプロジェクトはスティーヴ・ライヒとフェラ・クティを掛け合わせた「ライクティ」という造語を標榜しており、ミニマリズムとアフロファンクを融合させた実験音楽を追求しているとのこと。そのゴールが本作では如実に姿を表しており、ミニマルな反復音楽と疾走感のあるアフリカンビートが脳髄に快楽を与えます。プリミティヴな野性とクールな知性がせめぎ合い、新次元のグルーヴが産み落とされていく様相は圧巻。

2014年7月21日月曜日

Someday World : ENO • HYDE

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ロックミュージックのみならず、現代音楽やクラブミュージックといった多岐に渡る分野へ影響を及ぼし続ける巨匠 Brian Eno。80年代から連綿と続くキャリアを持ち、クラブミュージックやロックフィールドの第一線で活躍し続ける Underworld の Karl Hyde。マエストロにして賢者といえるこの二人がコラボレーションしたらどうなるのか?その答えは本作品で語られ、誰もが納得する答えになっていた。

20年も前から旧交を温め、お互いの作品でも交流関係にあった間柄。そんな二人が Eno のスタジオで音楽的実験を繰り返し、その結果として産み落とされたのが本作だ。Eno が山積みにしていた未完成トラックを Karl Hyde が受け止め、「これこそ自らのルーツ」とギタープレイを注入することで化学反応を起こさせる。いや、ここで聴けるトラックは化学反応というよりも、当然の帰結とも言える内容なのだ。内なる情熱を静かに漂わせ、距離感を保ちながら音を紡ぎだす姿が見えるかのよう。

Eno が70年代にロキシー・ミュージックで実践したストレンジでグラムの香りが漂うロック、80年代にトーキング・ヘッズ等で実践したクールなポリリズム~アフロファンク、全キャリアにおいて貫かれている極めて高品位なサウンドプロダクション、Karl Hyde が元来持ち合わせている80年代の抒情性やニューウェーヴのよれ具合。それらが電子音や人力を超越した高次元で融合し、多幸感が溢れたボーカルアルバムになっている。全てのリスナーが納得し、当然の帰結と断言できるアルバム。だけどもこの二人でしか導くことのできない答え。時にはジャーマン・プログレッシヴ・ロックの香りさえ漂う本作は極めて美しい。

2013年1月17日木曜日

Lux : Brian Eno


Lux : Brian Eno

現代音楽の巨匠 Brian Eno がWarpから新作リリースするようになって2年が経っています。そのWarpから初のアンビエント作品であり、21世紀初のアンビエント作品でもあるアルバム、と商業的に宣伝されていますが、このアルバムを聴くには全ての雑念を排除して、そこにある音に耳を澄ませば良い。

そもそもはトリノで開催されたサウンド・インスタレーション展「The Great Gallery of the Palace of Venaria」向けに制作された音源であり、その後ロンドン、シドニー、ニューヨーク、そして羽田空港でプロモーションを行なってきたというから、Enoのこの作品に対する意欲が伝わってくる。

元々は「play of light(光の戯れ)」というタイトルであり、作品の主題にも据えられているが、最終的には光の単位でもありラテン語で光を意味する「Lux」というタイトルが冠されている。兎にも角にも、この作品から響いてくる音の群れは場所や時間を選ばず、聴き方も一切提示されていない。逆に言えば、場所や時間、聴き方によっていかようにも変わっていく光の群れのような作品だ。

一日中、部屋の中にいれば、窓から差し込む光の移ろいや温もりの変化に気がつく。そこにいる人は、自分の気分によって光の捉え方も変わってくる。光と時間の関係性に思いを馳せながら聴くのもいい。この作品から感じ取れる抽象的概念に思考を巡らせるのもいい。ただひとつだけ言えるのは、この作品からは淡々とした愛情が感じられるということだ。

2012年1月11日水曜日

Panic Of Looking : Brian Eno



Panic Of Looking : Brian Eno and the word of Rick Holland

去年11月にBrian Enoがリリースした新作は、同年6月にリリースした傑作「Drums Between The Bells」(過去レビュー )の続編的EPだった。新世紀の賛美歌のような曲で幕を開け、音楽であることを拒み続けるかのような沈鬱なアンビエントトラックへと続く。仄暗い場所から聴こえてくるような電子音が連なって行き、それら楽曲には常にRick Hollandの詩がポエトリーリーディングされていく。耳を傾けて味わうことを許さないような、絵画的なアンビエントミュージックは何度繰り返しても腹に落ちてこない。これこそEnoの真骨頂で、理解されることを意図しない環境の一部で在り続ける音楽なのだ。現代における全音楽の、ありとあらゆる境界線上に位置する曖昧な音楽。