ラベル Rock の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Rock の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年11月29日火曜日

For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder ? : The Pop Group



The Pop Group の新作がリリースされたので、80年にリリースされた不朽の名作誉れ高い本作を聴き返した。ちなみに僕が持っているのは2016年2月にリマスターリリースされたもので、それまでは永らく廃盤状態にあった作品です。オリジナルに収録された The Last Poets 参加トラック「One Out of Many」の権利関係で揉めていたらしいんですが、そのトラックを削除して「We Are All Prostitutes」が代わりに収録されています。元々は先行シングルとしてリリースされていた「We Are All Prostitutes」を収録することで、本来あるべき姿になったということですが、まあ細かいことは気にしないで欲しい。

デビューアルバムだった「最後の警告」がブリストルサウンドの原点を感じさせるダブ的作品だったのに対し、本作は不協和音によるアジテーションミュージックになっている。ファンクやフリージャズ、ノイズミュージックといった要素を注入したパンクなんですが、不条理に対する怒りや苛立ちがびしびしと伝わってくる。マーク・スチュワートのボーカルを聴いた当時の人は腰抜かしただろうなぁ、と思えるような絶叫と扇情にまみれています。メロディらしきものは在って無いようなもので、ジプシーの子供たちがキスをする象徴的なジャケットからは程遠い世界を作っています。これを聴くとピストルズですら甘く聴こえる、本気で戦っている音楽。

2016年10月30日日曜日

Strange Little Birds : Garbage


Strange Little Birds : Garbage


フロントウーマンの Shirley Manson が語るには「これまでのどの作品よりも控えめ」という、今年6月にリリースされた本作。にも関わらず、どの作品よりもバカでかい音が鳴らされているのに驚く。スピーカーから放射されるエネルギーが凄まじく、メタリックな爆音ギター含めたインダストリアルな音響は紛れもなく Garbage 最新型だ。

何が控えめなのか?やはり「I'm so empty」と歌う気怠さや、作品全体を覆うダークネスな質感などから、精神的な攻撃性を控えめにしているということなんだろう。確かに Shirley の心情はそうなんだろうけど、補完するバンドの攻撃性が凄まじい。また「開放的な状況下で制作された原点回帰的作品」というコメントがある通り、デビュー作で見られた耽美性を見事に取り戻している。過去最高の美しさに満ちており、聴き手の覚醒を促す音圧も申し分なし。20周年通過後にバンドの歴史を一巡し、これまでにないほどパワフルな作品になっていた。

2016年10月6日木曜日

Post Pop Depression : Iggy Pop



2016年早々に旧友デヴィッド・ボウイが逝ってしまい、「イギー・ポップ後の憂鬱」と銘打ったアルバムリリースを控えていたイギー・ポップは何を思ったんだろうな、と今更ながら考える。

今年3月にリリースされた本作は、ロックンロールの将来を占う上で非常に重要だ。プロデュースはR&Rシンジケートの中心人物ともいえる QOTSA の Josh Homme に託され、バンドメンバーには同じく QOTSA の Dean Fertita や Arctic Monkeys の Matt Helders が迎えられ、まさしくロックンロールの偉大な流れが継承されている。「Ready To Die」の時に「ロックは高齢者の音楽」と書いたが、かろうじてここで襷が渡されていると言っていい。

Josh プロデュースの引き算的美学が追求され、必要最小限の音がバカでかく鳴っている。そこかしこに本来のイギーが持っているアートの香りが散りばめられ、傷だらけになりながらも生々しく叫び続ける男の姿がここにある。骨太で重たくブルージーな演奏により、目に浮かんでくるのは荒涼とした砂漠の光景だ。

イギー自身が「最後の作品になりそうだ」と語る本作は、キャリアの中でも屈指の傑作と言い切っていい。単に荒々しいだけではない、円熟味が迸る一人の男がここにいる。イギー・ポップ御年69歳。残されたただ一人のロックンロール・ヒーロー也。

2016年9月28日水曜日

K2.0 : Kula Shaker



もはや世間から忘れ去られた感すらある Kula Shaker ですが、今年2月にリリースした6年ぶりの新譜を猿のようにリピート厨。バカ売れしたデビューアルバム「K」(過去レビュー)から20年ですかそうですか。当時はオレ27歳だったけど、今は幾つだっけ(んご)。そのアルバムの次なるバージョンという意志を感じさせるタイトルだけあって、何度聴いてもじわじわくる仕上がりになっている。今年のフジロックに出演するなど日本での支持率は高いんですが、本国UKでは完全黙殺状態。普遍的な音作りなんですが、今の時代にそぐわないということなんでしょうか。

シタールの調べに導かれた呪術的なメロディは非常にスリリング。身を委ねていると太陽よりも高い高みに持っていかれるよう。彼らの持ち味である70年代サイケデリック感覚とアシッドな香りがそこかしこに散りばめられ、東洋志向の曼陀羅ぶりも気持ちいい。オリエンタル要素を支えるグルーヴィーな演奏も鉄壁だ。贅沢を言えば、もっと開き直って印度テイストを注入しちゃえば振り切った感が出たかも。例えばビートルズのサージェント・ペパーズにおける「Within You Without You」みたいな曲だけにしちゃうとかね。

2016年9月18日日曜日

GETAWAY : Red Hot Chili Peppers



John Frusciante が信頼を置くギタリスト Josh Klinghoffer。そんな彼が加入して作り上げられた「I'm With You」以来、5年ぶりとなる俺達の RHCP 最新作。この作品の評価がかなりの賛否両論になっています。プロデューサーに Danger Mouse が起用されていることもあり、音作りは極めてマイルド。酸いも甘いも噛み分けた彼らが大人になり、ファンク基調のロックは変わらないものの、哀愁を帯びた切ない作品になっています。

美メロ揃いなのでとても聴きやすい作品ではあるんだけど、かつての彼らが持っていた攻撃性は皆無。「母乳」の頃に持っていたやんちゃっぷりは全く無い。古くからのファンはこの頃の刷り込みが強いので、今の彼らを見ると非常におとなしく感じるんだろう。「母乳」がリリースされたのが今から27年前の1989年。その頃の若者は50歳前後だ(僕を含めて)。そりゃおとなしくなるか。

悪くはない。でもここ最近の彼らにあるような既視感たっぷり。大人になると攻撃性が薄れるのは RHCP でも同じことなんだろう。引き換えに得たものは洗練性と苦み。ロックはこうやって年老いていくのか。僕らがレッチリにまだまだ期待し続けるということは、ロックの次世代を担うパフォーマーが現れていない証左に他ならない。



2016年8月20日土曜日

HYMNS : Bloc Party



前作「Four」から4年経過してリリースされた Bloc Party の新作を聴いたんですが、一聴して「これって Bloc Party なの?」って驚いた。全く違うバンドに思えたからだ。ボーカルすら違うように聴こえた。ドラムとベースを担当していたメンバー2人が脱退し、新メンバー2人を迎え入れたのは聞いていた。つまりバンドの半分が入れ替わったしまったので、かつてのケミストリーが明らかに失われているのです。

これまでの彼らと違って内省的で、前作で見られた攻撃的要素が控えめになっている。性急でつんのめるようなドラムワークは失われ、ざらりとエッジの効いたギターもない。その代わりにエレクトロな要素が復活しているが、フロントマン Kele Okereke のボーカルもどこか控えめでエモーショナルな感覚が損なわれている。そもそもリードトラックからして相当変態的なエレクトロミュージックで、迷走っぷりが否めない。

昔からのファンは失望しているだろうし(僕もそうだ)、どこかで今後の彼らに期待すらもしている。繰り返し聴いて、彼らのコア要素であるメランコリアでどこか救いを求めている自分がいる。ポストパンク・リバイバルの旗手であった彼らはここにはいない。屋台骨のドラムとベースが入れ替わると、グルーヴはここまで失われるものなのか…これは新生 Bloc Party の通過儀礼なんだ、そう思うしかない。

2016年8月8日月曜日

Atomic : Mogwai

子供の頃から戦争の悲惨さや核兵器の恐ろしさを教えられ、小中学校の頃は冷戦のさなかに核戦争の恐怖に怯え、高校生になるとチェルノブイリ原発事故で世界は終わると思い、大人になってから福島原発事故で絶望の淵に立たされた世代。もはや DNA レベルで、原子力が制御不能になった時の恐怖を知っている。




Mogwai の新作は英国 BBC 制作ドキュメンタリー番組のサウンドトラック「Atomic : Living In Dread and Promise」を編集したものであり、核そのものをテーマとした作品だ。ここには「Little Boy」や「Fat Man」と言った広島・長崎をテーマとした曲が収録されているものの、核エネルギーに対しての全否定というよりは、制御不能なプロメテウスの火を作った人類の業といったものが表現されている。原子の世界が持つ抽象的な美が、轟音ギター控えめのエレクトロニカ寄りな荘厳な音で表現されているのが特徴だ。


彼らは今年6月に広島公演を行い(オバマ大統領の訪問直後だ)、核兵器を含めた原子力に対する考察を提示した。原子エネルギーの完全撤廃という、簡単に回答が出ない議論はここではしないが、核廃絶が大きなうねりとなり、その中心が広島・長崎になっているのは事実。人類が背負った重たい十字架について再考するには、この作品がそっと背中を押してくれるだろう。

2016年7月31日日曜日

A Moon Shaped Pool : Radiohead


A Moon Shaped Pool : Radiohead


今年6月にリリースされた約5年ぶりの Radiohead 新作を聴きまくってます。というより自分の一部分の何かが、ひたすら聴くことを要求し続けている。前衛的なのに聴き易く、一部分の何かにすんなりと染みこんできます。これはもう、彼らの作品の中でも傑作の部類に入ると言い切っていい。そりゃあ衝撃性でいえば「KID A」にはかなわないものの、完成度の高さで言えば「OK Computer」に匹敵するレベル。


もはや彼らにとって欠かせない存在の Nigel Godrich によってアンビエントで幽玄な空間が強調され、エレクトロニカな風情を醸し出しながらも、バンドとしての肉感的な鼓動すら感じさせる。新たな高みを象徴するオープニング「Burn The Witch」から、ライヴアルバム「I Might Be Wrong」に収録されていた既発曲「True Love Waits」まで、全てが完璧で美しく予定調和のようだ。


哀しさと、前を向いている情熱の共時性。堕ちていく感覚がありながらも、救済すらも感じさせて掴みどころがない。ロックやエレクトロニカ、アンビエントは勿論、クラシック、ジャズやアシッドフォークからジャーマンプログレまで全ての音楽を消化し、Radiohead であることを提示した大傑作。今年のサマソニで伝説を作ってくれる予感すらある。


 


2016年7月22日金曜日

night thoughts : Suede


night thoughts : Suede


「Bloodsports」から3年、Suedeの持つ刹那と耽美は永遠のものになってきた。作品毎にポジティヴィティとダークネスの比率が異なっているのは彼らの常だが、全作品を貫いている美学は徹底的に提示され続けている。その美学、つまりSuedeであることに拘りつつ、ダークで美しい世界を構造的に作り上げたのが本作だ。


個々のトラックがしなやかに形を変え、美しく寄り添いながら厳かに響いている。リプライズを繰り返す結果、作品全体が一つのコンセプトを持ったアルバムへと昇華している。アルバムを一つの作品として提示することで、楽曲が使い捨てのように消費されるシーンにアンチテーゼを示しているとしか思えない。緻密に練り上げられた全編を通して聴こえてくるのは、闇の深淵から、暗闇の海から浮かび上がってくる、咽び泣くようなメランコリアだ。再結成したバンドとは思えないほど、グラマーな感覚が増した傑作だ。

2016年7月14日木曜日

Wow : Beck



僕たちの Beck が6月にリリースした新曲がやたらと良い。Beck ならではのユーモア感覚がそこかしこに散りばめられた、Beck しか作れない多幸感に満ちたヒップホップチューン。Beck の子供やその友達にデモを聴かせたところ、ちびっこ達が「絶対リリースした方がいい」と声を揃えたそう。それだけ光に溢れたトラックということなんだろう。去年の「Dreams」ともども収録される10月リリースの新作を占う上で、非常に重要な楽曲だと思います。

2016年7月4日月曜日

Chaosmosis : Primal Scream



アルバム毎に作風やコンセプトをカメレオンのように変貌させてきた俺たちのプライマルズ。2008年の「Beautiful Future」以降は振り幅も大きくなく、安定感のある魔法のようなロックンロールを披露し続けている。そして「More Light」から3年ぶり、いよいよ年齢という足枷を感じさせない、妖艶でスリルのあるロックンロールをボビー・ギレスピーは手中にしたようだ。

ゴスペルの香り漂うリードトラック「Trippin' On Your Love」では名盤「Screamadelica」の再来を感じさせるが、単純に焼き直すだけでは終わらない。混沌とした世界や体制への共闘を呼びかけるが如く、セクシーかつ色彩豊かなハイエナジー・ロックンロールを叫び続ける。特に「Where The Light Gets In」で23歳女性シンガー Sky Ferreira を起用するあたりは中年親父の老獪な技を感じさせる。

各曲の方向性は節操が全くないが(それこそプライマルズ!)、ほぼ全編に渡り女性シンガーがフィーチャーされているので、ファッキンなエロスがそこかしこから迸っている、滴り落ちている。ぶれない、相変わらずぶれない。根っこにあるのはブルーズであり、パンクであり、ロックンロールであり、栄光を手にするまでの闘う姿勢だ。芸術とは自由であり、かつ闘いであることを再確認できる傑作であるのは間違いない。

2016年5月29日日曜日

All For One : The Stone Roses



22年ぶりという、ローゼズのまさかの新曲がリリースされました。5年前に再結成を果たしたまま新作なしの状態でしたが、今こうして彼らの新曲を聴くといろんな想いがぐっとくる。

10年前に「ここ数年囁かれている再結成でかっこ悪く登場されるのもちょっと嫌だしなぁ。再結成したバンドが前にも増して強靭になった例は聞いたこともないし、これはこのままでいいのか」(過去の記事)と書いたけど、彼らは自分たちのレジェンドとしての立ち位置を十分理解した上で、この新曲をリリースしたんだろう。この新曲は過去の彼らを踏襲した上で、ものの見事に上書きした素晴らしいものとなっている。

イアン・ブラウンのヨレながらも美しい歌声を包んでいるあの空気感と言ったら!きらきらと光り輝くような音の響きこそ、ローゼズには欠かせないものなんだ。この時点で、過去に最大の敬意を払っているのが一発で分かる。「Second Coming」(過去の記事)で前のめっていたジョン・スクワイアの超絶グルーヴィギターは控え目に、かつブルージィでサイケデリックにかき鳴らされおり、新たな時代の到来を感じさせる。レニのドラムは初めて聴くような跳ね方をしており、マニの鉄壁ベースがバンドの土台を完全体に仕上げている。デビューアルバム(過去の記事)にも使われたレモンをジャケットモチーフにしているのも心憎い。

「かっこ悪く登場されるのもちょっと嫌だしなぁ」という10年前の懸念は見事に払拭されたよ。アルバムも心の底から期待している。

2016年3月28日月曜日

Garbage 20th Anniversary Edition : Garbage



今年6月に4年ぶりの新作をリリース予定の Garbage。去年にはデビューアルバム(過去レビュー)の20周年記念盤をリリースしています。改めて説明するまでもなく、頭脳として機能する名プロデューサーの Butch Vig を中心に結成されたバンド。Butch Vig は Nirvanaの「Nevermind」や The Smashing Pumpkins の「Siamese Dream」を手がけた当世随一のプロデューサーとしても知られています。


久々に聴き返して思うのが、これほど完成度の高いデビューアルバムにお目にかかれるのは滅多にないという事。老練な Butch Vig が手がけているので当然なんだけど、デビュー以降20年以上経過してもバンドとしてのブレが全くない。ノイジーなギターを支えるエレクトロニクスな骨格、ポップネス炸裂なメロディ、そしてバンドのアイコンとして光り続ける Shirley Manson のデカダンスで妖艶なボーカル。この時点でバンドとしての方向性が完全に定まっている。

記念盤にはシングルのカップリング曲が収録されていますが、The Jam の「Butterfly Collector」がカバーされているのが興味深い。カップリング曲といえどもクオリティは総じて高く、アルバムの延長上として遜色なく聴けます。また、デジタル配信のみでリリースされた「Super Deluxe Edition」は何と全62曲!おびただしい数のリミックスワークスが完全収録されています。リミキサー陣は Martin Gore やら Adrian Sherwood やら Goldie やら Tricky やら Massive Attack やらぐっとくる人選。CD 2枚組の Deluxe Edition より Super Deluxe Edition を買えばよかったと後悔(買っただけで満足するだけなんだけどね)。

2016年2月21日日曜日

Live at Finsbury Park : Rage Against The Machine



空耳アワーの常連として、今更ながらお茶の間に浸透しつつある Rage Against The Machine。2007年に再結成してワールドツアーを行いましたが、その後は新作リリースもせず活動休止状態。そんな彼らが昨年リリースしたライヴ映像作品がこちら。2010年6月にロンドン フィンズリーパークで行われたフリーコンサートを収録したもので、暴動寸前ともいえる盛り上がりっぷりに戦慄すら覚える。

そもそもは、UK在住の一般人であるモーター夫妻が仕掛けたfacebookキャンペーンがことの発端。オーディション番組「Xファクター」が輩出するアーティスト達がクリスマスシーズンのヒットチャートを牛耳っていることに業を煮やし、RATMの「Killing in the Name」を1位にしようとネットで呼びかけたのだ。するとみるみるうちに賛同者が増えていき、それを聞きつけた当のバンドは「1位を獲ったら収益を全てホームレス基金団体へ寄付し、フリーコンサートを約束する」と宣言。結果として、クリスマスにそぐわないような曲(タイトルは「大義名分のもとの殺人」の意)が1位を制し、翌年には晴れて80,000人集客のフリーライヴ開催の運びとなったのだ。2011年のエジプト革命のきっかけとなったのもfacebookであることから、ネットの持つ起爆力を改めて思い知らされる出来事だ。

ライヴの素晴らしさは言うまでもなく、ギターとは思えないトム・モレロの超絶プレイが凄まじい。The Crashの「白い暴動」をカバーしている姿にも胸が熱くなる。20年も前に登場したバンドなのに、時代を超越した足腰と革命思想には頭が下がる思いだ。しかしここで言っておきたいのはやはり「Killing in the Name」が2015年の空耳アワーで破壊力抜群のネタをドロップしたことだ。

「ナゲット割って父ちゃん」

この破壊力は彼らのライヴ演奏すら凌駕しており、俺たちの記憶に永遠と刻まれるだろう(下に空耳アワーの映像を貼っておきます)。




2016年1月28日木曜日

Dodge and Burn : The Dead Weather



「Sea of Cowards」(過去レビュー)から5年ぶりにリリースされた(と言っても昨年9月リリース)、The Dead Weather の 3rd アルバムが妖艶かつ不穏な空気をたたえて凄すぎる。ロックンロールの正統的後継者である Jack White のサイドプロジェクトと捉えられているバンドですが、問答無用のロックンロール・グルーヴを大炸裂させ、サイドプロジェクトなんて片手間な感覚は全くなし。女性ボーカリストの Alison Mosshart を迎えているからこそバンドは呪術的に妖しい光を放っており、長期間に渡り継続的にレコーディングされた本作はこれまでで一番成熟した出来に。

時にはレゲエタッチになる Jack White が叩くドラム、Queens of the Stone Age の Dean Fertita が切り刻むブルージーなギター、The Raconteurs にも参加している Jack Lawrence のダウントゥアースなベース。彼らが紡ぎ出すバンドケミストリーにより、爆発的閃光を放つガレージロックが成立。方法論はオールドスクールなのに、放射される熱量はとてつもなく、佇まいはあくまでもクール。21世紀になってもまだロックンロールは死んでいなかった。Zeppelin が切り拓いたハードでメタリックな南部志向ロックンロールを、新たな形で呈示する彼らこそロックの未来なのだ。

2015年12月27日日曜日

La Di Da Di : Battles



「Gloss Drop」(過去レビュー)から約4年ぶりの Battles 新作は、ジャケットで表現されている通りカラフルでポップで有機的な音になっています。前作がタイヨンダイ・ブラクストン脱退の影を引きずっていたのに対して、本作では完全インストかつユーモアと開放感に満ちている。

スリーピースバンドとは思えないほどの整合性と鍛錬の習熟性は相変わらずですが、テクノロジーの僅かな引用が人間性の回復をもたらしているのも確か。鉄壁のバンドアンサンブルが複雑かつダイナミックに炸裂しています。マスロック?エクスペリメンタル?ポストロック?聴き進むにつれ、ジャンルに当てはめようとする自分の姿に気がつき、脳内には幾何学模様が浮かんでくる。この音楽こそどこにも属さない、Battles でしか鳴らし得ないものなのだ。

2015年12月12日土曜日

25 : Adele



「21」(過去レビュー)以来、約5年ぶりとなる新作がリリース。「全世界が待っていた」と言い切りたいぐらいの売れ行きで、発売3週間で500万枚というスーパーメガヒットぶりを発揮しています。定額制ストリーミング配信を拒否しているので、胸のすく思いというか、素直に「ざまあみろ」と言いたくなる(誰に!)。

どうやら21世紀最大のヒット作となる模様で、インシンクが樹立した2000年の記録を塗り替えたらしい。しかもビルボード1位になった時、2位はジャスティン・ビーバーだったとか。これから分かるとおり、米国チャートは相変わらずアイドルが幅を利かせている体たらく。そんな死に体マーケットの中で、この作品が売れまくっている事実は実に興味深い。

リリースにあたっては特別なマーケティング展開は見当たらず。ブランクが空いたのでリスナーが飢餓感を煽られた、というのもしっくりこない。前作以降は出産と育児、創作活動に専念していたはずで、戦略的にブランクを空けた訳でもないだろう。単純にリスナーは良質の音楽を待ち望んでいた、としか言いようがない。著名なミュージシャン達から強力な支持を集めている彼女でもあるので、リアルな支持層ががっつりと後押ししている結果なんだろう。

この作品で歌い上げられているのは、謝罪、贖罪、後悔、哀愁の念と言ったもので、過去の作品から大きな一歩を踏み出している。ボーカリストの力量はいうまでもなく、情感と深みとソウルのある表現力は更に増している。様々な超一流プロデューサー(Ariel Rechtshaid から Mark Ronson や Danger Mouse まで!)を起用することにより、作品全体は前作のブルース色から脱却してバラエティ豊かな彩りに。芳醇なポップネスというのは正にこのこと。こういう作品が大ヒットを飛ばすと、音楽市場もまだ望みがあると思えます。

2015年11月15日日曜日

The Beatles 1


The Beatles 1

僕が意識的に音楽を聴き始めたのは1980年12月頃、小学6年の時だ。ちょうどその頃、ジョン・レノンが暗殺され、大人たちは大騒ぎしていた。子供だった僕は、ことの重大さを大して理解していなかった。

あれから35年経ったが、リアルタイム世代の声に耳を傾けると共通意見があった。「二人の大天才と二人の天才」という声だ。ジョン・レノンの死後、ジョン派となった僕はその声にほぼ同意していた。先日リリースされたこのベスト盤を聴くまで。

この作品は2000年にリマスタリングされたベスト盤を更に磨き上げ、美しくリストアされた5.1ch映像集を特典に付けたものだ。これまでリマスター盤をろくに聴いたことがなかったんだけど、ここでよく分かったことがある。「ビートルズの4人は二人の大天才と一人の天才、一人の超天才だった」ということだ。いうまでもく、超天才とはリンゴ・スターのことだ。ジョンでもポールでもない、申し訳ないがジョージでは全くない。何度でもいうがリンゴ・スターだ。

音にかかっていた靄が全て取り除かれ、リアルな音から聴こえてきたのは途方もないドラムの音だった。ドラムが技巧的とかそういうレベルじゃなく、このタイム感は誰にも真似ができない。デビュー当初からドラムテクニックが完成しており、「涙の乗車券」や「デイ・トリッパー」ではドラムを聴くことの快楽やスリルを教えてくれる。高橋幸宏がすさまじく影響されているのを改めて実感。二人の大天才の影で過小評価されてきた、超天才のドラムにぜひ耳を傾けてほしいと思う。


2015年10月31日土曜日

Live At The Royal Albert Hall : Adele

Adeleが新譜を出すのを記念して。



「21」(過去レビュー)が空前のセールスを記録した後、2011年9月22日に英国ロイヤル・アルバート・ホールで行われたライブを収録した音源。CD+DVDとなっていますが、ここでは映像の方を是非観てほしい。Adeleが震わせる会場の空気と、それに共鳴するオーディエンスの感動がしっかりと伝わってくるから。収録曲は自身のオリジナルに加えて、米カントリーバンド The SteelDrivers や The Cure 、Bonnie Raitt、Bob Dylan のカバー。どれも自分のモノにして歌い上げています。

「21」の歌声があまりにも深くてスモーキーなので「オートチューンでも使っているんじゃないか?」という疑念もちらりと頭をかすめたけど、この映像を観て確信。もはや「歌が上手」と褒めるのが陳腐なほどで、彼女の歌声はある種の楽器と言ってもいいぐらい。控え目ながら彼女をしっかりと支えるネイキッドでタイトな演奏、シンプルで厳かなステージと会場、オーディエンスの反応、カメラワーク……どれをとっても素晴らしい。普通に観てると普通に涙がこぼれてくる、素晴らしいライヴだと思います。

Amazonのレビューでは「MCがやたらと饒舌だがそれがいい」といった類のレビューが多いけど果たしてそうかな?確かに彼女の真の姿を理解するにはいいだろうが、話が長いし、ガハハとおばさんっぽく笑うし、しかも下品だ(第一声が「The Royal Albert "fu*king" Hall !!」)。 ライヴにこなれてないこともあるんだろうけどね。このMCがシンプルになれば、最高の絶品になるライヴ作品だ。

2015年9月25日金曜日

Dreams : Beck



「Morning Phase」(過去レビュー)で奇跡の大復活を遂げた Beck 君が、今年の6月に配信限定で新曲をリリースしていました。何故この時期に記事を?単純にスルーしていただけです。慌てて購入したところ、直近の作風とは異なってポップでファンキーでマッシヴなハッピーチューン。小刻みなカッティングギターが心地よく、ボーカルもここ最近の幽玄な音使いを踏襲。これが次作のリードシングルになるというから、「Morning Phase」とは全く違った作風になる予感。動の作品と静の作品は交互に作られる、の法則は守られるようです。