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2017年1月18日水曜日

COW / CHILL OUT, WORLD ! : The Orb



昨年10月にリリースされた The Orb 最新作は「キャリア史上最もアンビエントな作品」と銘打たれている。タイトルから言って The KLF の大名作「Chill Out」やピンク・フロイドの「原子心母」に対する何らかの回答、もしくはオマージュと取るのは自明。メンバーの Thomas Fehlmann が 「21世紀なんだから、みんな座してチルアウトするのがいいぞ、破壊的行動を続ける前にな(It's the 21st century and it seems like a good idea for people to sit back and chill the fuck out, before continuing to act destructively.)」とプレスリリースで語っており、アンビエントというよりはチルアウト的作品であるのは間違いない。

そもそもアンビエントとチルアウトに境目はあるのか?これは紛れもなく存在すると思う。アンビエントが無意識下の音楽であるのに対して、チルアウトは能動的鑑賞を促す作用を持っているからだ。ユーザの使用方法や感じ取り方によって左右されるものの、睡眠作用または覚醒作用のどちらかで定義付けされるとすれば、この作品は覚醒感に満ちている。

耳を澄ませばウルトラワールド的ダブ音響処理がなされながらも、牧歌的で多幸感溢れるサウンドスケープが累々と連なっているじゃないか。まぎれもなく90年から続いているイビサ的空間がここで再現されており、かつ世界へ変革を促すような振動に満ちている。盟友である Killing Joke の Youth、およびアンビエント界の巨匠である Brian Eno の実弟である Roger Eno も参加しており、ここ最近のチルアウト作品の中でも出色の出来に仕上げている。

※作品を聴きながら、隣に座ってる赤ちゃんを見つつ記事を書きました。この作品と赤ちゃんの組み合わせはとんでもない覚醒感がありました。

2016年9月14日水曜日

The Ship : Brian Eno



今年4月にリリースされた Brian Eno の新作は「Lux」以来4年ぶりとなるが、本作ではタイタニック号の沈没をモチーフにしているとのこと。また、今年1月に逝ってしまった盟友 David Bowie に捧げられている模様。1曲目のタイトル曲は21分にも及び、穏やかな大海を想起させる。2曲目は3章で構成された組曲形式であり、美大生の頃にインスパイアされたという The Velvet Underground の「I’m Set Free」がカバーされている。

全編に渡り壮大なるアンビエントに支配されたアヴァンギャルドな実験作品ではあるが、それは現代における我々の心象風景を表現しているかのよう。冒頭では静かな船出を連想させたが、中盤のポエトリー・リーディングやスポークン・ワードの導入によって流れは変わっていく。それはまるで船頭の舟歌のようで、混沌と無秩序に支配された我々の不安を煽る。北海に霧がかったようなサウンドスケープが展開される中、終盤を引き継ぐのは天からの光のように我々を救済する「I’m Set Free」だ。これまでの Eno 作品のどれとも似ていない、物語性と連続性を感じさせる野心作であり、新たなる地平へと踏み出した大いなる一歩と取れる作品だ。

Tracklist 

01. The Ship 
02. Fickle Sun 
(i) Fickle Sun 
(ii) The Hour Is Thin 
(iii) I’m Set Free

2013年1月17日木曜日

Lux : Brian Eno


Lux : Brian Eno

現代音楽の巨匠 Brian Eno がWarpから新作リリースするようになって2年が経っています。そのWarpから初のアンビエント作品であり、21世紀初のアンビエント作品でもあるアルバム、と商業的に宣伝されていますが、このアルバムを聴くには全ての雑念を排除して、そこにある音に耳を澄ませば良い。

そもそもはトリノで開催されたサウンド・インスタレーション展「The Great Gallery of the Palace of Venaria」向けに制作された音源であり、その後ロンドン、シドニー、ニューヨーク、そして羽田空港でプロモーションを行なってきたというから、Enoのこの作品に対する意欲が伝わってくる。

元々は「play of light(光の戯れ)」というタイトルであり、作品の主題にも据えられているが、最終的には光の単位でもありラテン語で光を意味する「Lux」というタイトルが冠されている。兎にも角にも、この作品から響いてくる音の群れは場所や時間を選ばず、聴き方も一切提示されていない。逆に言えば、場所や時間、聴き方によっていかようにも変わっていく光の群れのような作品だ。

一日中、部屋の中にいれば、窓から差し込む光の移ろいや温もりの変化に気がつく。そこにいる人は、自分の気分によって光の捉え方も変わってくる。光と時間の関係性に思いを馳せながら聴くのもいい。この作品から感じ取れる抽象的概念に思考を巡らせるのもいい。ただひとつだけ言えるのは、この作品からは淡々とした愛情が感じられるということだ。

2012年1月11日水曜日

Panic Of Looking : Brian Eno



Panic Of Looking : Brian Eno and the word of Rick Holland

去年11月にBrian Enoがリリースした新作は、同年6月にリリースした傑作「Drums Between The Bells」(過去レビュー )の続編的EPだった。新世紀の賛美歌のような曲で幕を開け、音楽であることを拒み続けるかのような沈鬱なアンビエントトラックへと続く。仄暗い場所から聴こえてくるような電子音が連なって行き、それら楽曲には常にRick Hollandの詩がポエトリーリーディングされていく。耳を傾けて味わうことを許さないような、絵画的なアンビエントミュージックは何度繰り返しても腹に落ちてこない。これこそEnoの真骨頂で、理解されることを意図しない環境の一部で在り続ける音楽なのだ。現代における全音楽の、ありとあらゆる境界線上に位置する曖昧な音楽。