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2016年10月22日土曜日

Arrange and Process Basic Channel Tracks : Scion



先日のTresor 25周年記念パーティに足を運ぶつもりだったんですが、体調を崩してしまったので断念。代わりに家で悶々とこの記念碑的ミックスを聴いておりました。季節の変わり目故、体調崩される方も多いのでご自愛ください。

さて、この Scion とは今では Scion Versions という名にアップデートされたユニットで Pete Kuschnereit a.k.a. Substance と Rene Lowe a.k.a. Vainqueur からなる二人組。Basic Channel の思想を引き継ぎ、ミニマルダブをドープに展開しています。

そしてこのミックスCDは2002年に Tresor からリリースされた200番目の作品で、当時はまだ珍しかった Abelton Live を駆使したミックスを披露。無機質で無展開なオリジナル音源を立体的に再構築することで、ハードエッジな流れを生み出すことに成功しています。随所に挟み込まれる Basic Channel の硬質なエレクトロニックノイズがダビーに光り、延々と反復されるミニマルビートが快楽を紡ぎ出す。煙たくて重い素材が徐々にビルドアップされ突き進んでいくさまは音の洪水としか言い表せない。Basic Channel なんだけど Basic Channel じゃない本ミックスは未だ色褪せていませんでした。

2016年10月14日金曜日

Transport : Juan Atkins & Moritz Von Oswald Present Borderland



この惑星のテクノ中心地として機能し続ける聖地 ベルリンとデトロイト。とりわけベルリンの地下から機能美に溢れた音を発信し続けてきたのが老舗クラブかつレーベル  Tresor であり、ベルリンの壁崩壊直後から営業し続けて四半世紀が経過した。今月には渋谷 Contact でも25周年記念イベントが行われるが、この祝祭に一番の彩りを添えるのが本作。

ベルリン ミニマルダブ総帥であり Basic Channel や自ら率いるトリオで重低音を鳴らし続ける Moritz Von Oswald、かたやデトロイトテクノのリアルな源流であり続ける Juan Atkins。彼らが3年前に「Borderland」という作品でタッグを組んだのは記憶に新しいが、今回は前作名をユニット名に冠して再び惑星降臨。

この作品では四半世紀の時を越えて2大聖地を繋いでおり、地球の中心まで響き渡る重低音と、数光年先まで意識を飛ばされるコズミックな音が調和を取っている。叙情的な感情は一切排除され、両者の鳴らす音が過不足なく融和されており、不可逆的芸術領域に達していると言っていい。単なるミニマルダブとして機能しているのではなく、フロア対応の要素が注入されていることで、過去25年のテクノを総括している仕上がり。名匠2人にしか創り上げられない作品なのは確かで、テクノとは一過性の音楽ではなくエバーグリーンな輝きを放ち続ける文化であることを証明している。

2015年7月27日月曜日

Sounding Lines : Moritz Von Oswald Trio



賢者と呼ぶに相応しい、ミニマルダブの始祖である Moritz Von Oswald。そんな彼が結成したスーパートリオグループの作品をこれまで何度か取り上げてきましたが、今回はドラム担当の Vladislav Delay が離脱した代わりに、ナイジェリアのドラマーである Tony Allen が参加。アフロビートの創始者としてあまりにも有名なフェラ・クティと共に行動し、現代もなお Rocket Juice & the Moon (過去レビュー)に参加するなど精力的なミュージシャン。しかもミックスを Ricardo Villalobos が手がけており、ミニマルの極北とも言える仕上がり。なおかつジャズやファンクなどのエッセンスが練りこまれ、ダビーな音と図太いベースの鳴り響きと相まり、様々なジャンルを超越した異質な音楽を提示しています。アンダーグラウンドミュージックの事件とも言える超問題作にして、今年の最高傑作レベル。

2013年12月1日日曜日

Blue : Moritz Von Oswald Trio


Blue : Moritz Von Oswald Trio

レジェンドの Juan Atkins と共演を果たしただけでなく、Max Loderbauer や Vladislav Delay と共に「Moritz Von Oswald Trio」としても継続的に活動している Moritz Von Oswald。昨年はトリオ名義でアルバム「Fetch」(過去レビュー)をリリースしましたが、今年は新作シングルをリリースしています。2000年前後の寡作っぷりが嘘のようなペースです。

タイトル曲のミックスに Juan Atkins も加わっているようですが、音が極限までそぎ落とされたミニマルな鳴りっぷりは他者の追随を許さないもの。緩く、そして重く刻まれるリズムとベースが一切の感情を排して続いていく。その上を揺蕩うわずかな電子音とシンセリフのみがリスナーを繋ぎとめる。これこそがミニマルダブの極北と言えるものであり、Moritz Von Oswald の真骨頂と言えるものだ。また、タイトル曲のダブバージョンでは、只でさえダブ的な音響を更に深化させている。音の響きはますます重たくなり、煙たいアトモスフィックな質感が感覚を揺さぶり続けます。

2013年11月27日水曜日

Borderland : Juan Atkins and Moritz von Oswald


Borderland : Juan Atkins and Moritz von Oswald

デトロイトテクノのオリジネーターである Juan Atkins、90年代におけるミニマルダブの先駆者である Moritz Von Oswald ……デトロイトとベルリンというテクノの2大聖地を繋ぐ二人が20年ぶりの共演を果たしてます。しかも名門レーベル Tresor からのリリースということもあって、テクノ史上最強タッグに華を添えています。ちなみに 20年前の1993年には Moritz Von Oswald と Thomas Fehlmann(現 The Orb)のユニット 3MB と、Juan Atkins がコラボレーションした「Jazz is the Teacher」がリリースされています。

果たしてその内容はデトロイトとベルリンの融合に他ならなく、この二人だからこそ紡ぎだされる音の粒子と響き、戯れが五感を刺激します。シンプルな四つ打ちのキックと透明感のあるコズミックなシンセ音は紛れもなくデトロイト的であり、地を這うように重く響くベースラインやジャジーな香りが漂うダブ的音響処理は Moritz Von Oswald 配下にあるものです。

ほぼ同じBPMで打ち込まれていくキックがミニマルに続いていき、劇的な変容を感じ取れることは殆どない。だからこそスモーキーな雰囲気が徐々に鼓膜へとまとわりつき、いつしかリスナーは森の奥にある沼に足を取られるように耽溺していく。後半の「Treehouse」以降から二人の個性が際立ち始めるが、だからといって劇的な変化が訪れるわけではない。ディープに、ミニマルに、ジャジーにことは進んでいく。絶対的な快楽がここにあるわけではない。しかしながら、静かに流れる音の清流に身を委ねることで、静謐な快楽を発見することができるだろう。

2012年11月22日木曜日

Fetch : Moritz Von Oswald Trio

新しいiMacから光学ドライブが消えました。ドライブをなくしてデザインを優先させた以上に、データはネットから入手されるべきというアップルのメッセージと言えます。確かに音楽や映像、新聞、本といったコンテンツは90年代の予言通りにネット配信されています。それでも音楽CDは本当になくなってしまうのか?なるほど僕だってCDを買うにしても、その殆どをリッピングしてiPodで聴きます。家で聴くことはあまりない。それでも空気を媒介にして音楽を聴きたくなる時もある。そんな時にAACといった配信データを家のステレオで聴くと、CD音源との音質差に愕然とする。音楽CD市場が縮小することはあっても、消失することはないと思います。

何故こんなことを書くかというと、Moritz Von Oswald Trioの新譜こそ最高のリスニング環境にて爆音で聴かれるべきだと思うから。



Fetch : Moritz Von Oswald Trio

もはや説明不要のトリオ・ザ・テクノですが、一過的のプロジェクトではなく恒常的ユニットとして活動し続けています。今回リリースされた新作では、これまで以上にエクスペリメンタルな雰囲気をまとっていました。「Jam」、「Dark」、「Club」、「Yangissa」という4つのトラックから成っていますが、「Jam」でその真骨頂を最大限に発揮。本作ではベース、サキソフォン、クラリネットやトランペットといった生楽器がフィーチャーされているのですが、「Jam」でマイルス・デイヴィスのエレクトリック・ジャズ期(Bitches Brewあたり)を彷彿とさせます。とは言っても全編を貫くのはゆるりとしたBPMの四つ打ちで、このあたりはMoritz Von Oswaldの面目躍如というところ。生音は完全にダブ化されたパーツとして、湿り気と硬質な感覚が共存している音響空間をひたすら漂います。ミニマルでありながらもここまで即興性を重視した音楽って何なんだ?もう一度言いますが、こういった音楽こそ爆音でキメてほしいと思います。