ラベル DJ Shadow の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル DJ Shadow の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2016年9月3日土曜日

The Mountain Will Fall : DJ Shadow


The Mountain Will Fall : DJ Shadow


稀代の偏執的ヴァイナルジャンキーであり、レアグルーヴへの限りない愛情を表明し続け、アブストラクトヒップホップの概念を創り上げた男 DJ Shadow。サンプラーだけで制作したアルバム「Endtroducing...」(「世界で初めてのサンプリングのみで作られたアルバム」とギネスブック認定)から20年が経ちました。


あれから数々のアルバムをリリースしてきた中で、2006年の「The Outsider」ではハイフィーの大胆な導入により旧ファン層を驚かせたシャドウ。かつてのアブストラクトな要素が薄れていき、メインストリーム寄りになったシャドウはどこへ行くのか?というのが旧ファンの共通認識だったと思います。そして5年ぶりの新作で奴は帰ってきた、間違いなく!


どこから掘ってきたのか分からないドタドタしたドラムビートをサンプリングし、かつてのブレイクビーツな感覚が蘇っているじゃないですか。リードトラック「The Mountain Will Fall」のレトロフューチャートラックで鷲掴みされ、続く「Nobody Speak」では様々なフィールドのミュージシャンから熱い視線を浴びている Run The Jewels をフィーチャーし、マザファカな現代感覚への目配せも忘れちゃいない。シャドウの旗印であるメロウで哀愁漂うウワモノも全編に散りばめられ、なおかつマッシヴでファットな骨格が力強く支えまくる。


数年前、「未来的すぎる」という理由でプロモーターからクラブプレイを強制終了させられた出来事がありましたが、この時のDJプレイがホーリーシットに格好いい(リンクから聴けるので是非お試しあれ)。原点開始しながら、この時の経験を踏まえている最新型アブストラクトヒップホップを聴かずにはいられないよ。






2012年12月30日日曜日

Total Breakdown : DJ Shadow

僕の義父が鬼籍に入って4年以上経つが、死の間際まで技術者であり実業家であり続けた人だった。大学を卒業して藤倉電線(現フジクラ)に入社し、数年してから当時としては珍しく転職をした。転職先はオーディオ機器メーカーの赤井電機で、それから仕事の脂が乗りきっている時に独立を果たし、最後は経営者となった。

前述の赤井電機はハイエンドのカセットテープデッキで名を馳せ、70年代はベトナム帰りの米国兵が大挙して買って帰ったという。クイックリバース機能をいち早く採用して、80年代初頭に成長ピークを迎えたが、やがてデジタル化の波にもまれて経営破綻した。その後、AKAI professionalという電子楽器ブランドが独立したが、こちらも経営破綻。その後AKAIというブランドはNumarkに引き継がれている。

さて、AKAIと言えばAKAI MPCというサンプラーだ。今ではPCがハイスペック故にDJユースのメイン機材になっているだろうが、80年代後半~90年代前半のサンプラーといえばMPCであり、サンプリングのみで作られた史上初の作品として有名なのが、DJ Shadowの「Endtroducing...」(過去レビュー)だ。おそらく義父はDJ Shadowのことを知らなかっただろうし、今日紹介する作品のことも当然知らない。


Total Breakdown : DJ Shadow

前置きが長くなってしまったが、今年の夏にリリースされたDJ Shadowの未発表音源集がおそろしく素晴らしい。

サブタイトルの「Hidden Transmissions From The MPC Era.1992 - 1996」から分かる通り、この作品はAKAI MPCを駆使して作られた92~96年の未発表アーカイブだ。つまり96年にリリースされてサンプリングミュージックの金字塔となった「Endtroducing...」の前に蓄積された音源集だ。当然ながら途方もない量のヴァイナル、そしてターンテーブルとミキサー、MPCで作られているトラック群は有り得ないほどのグルーヴに満ちたヒップホップ~ブレイクビーツで構成されている。決して日の目を見ることもなく、溶かされるビニールとしての運命を辿っていったであろうファンクチューンやレアグルーヴが、DJ Shadowにより引き揚げられて再構成されていく。単なるリズムマシーンで打ち込まれたビートではなく、無名のドラマーが叩いたであろうドラムパターンが繰り返されることにより、リスナーは途方も無い快楽を得ることができるのだ。

これらの作品が作られたのが今から20年前。全く色褪せていないどころか、今の時代でも完全に有効だ。おそらく亡き義父に聴かせたら驚くことだろう。