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2015年2月21日土曜日

Hi Scores EP : Boards Of Canada



これまで再発しては廃盤を繰り返してきた Boards of Canada の初期名作EP「Hi Scores」。オリジナルの DAT 音源が2014年リマスターを施されて装い新たにリイシューされました。オリジナルは1996年リリースであることから、今の耳で聴くと若干の古臭さというかチープさを感じますが、それがまたオールドスクール風情を醸し出して上等な出来になっています。彼らがかねてから持っているサイケデリアは百花繚乱、靄の向こうから揺蕩うように聴こえる電子音はこの頃から引き継がれています。しかもエレクトロニカというタームが産声を上げる前から彼らはエレクトロニカであったことを再認識。まとわりつくようなアンビエンスムードの根っこには紛れもなくヒップホップな図太さが。当時の言葉で言えばアブストラクトヒップホップとなるんでしょうね。夜明け直後の静かな水面を漕ぎ進む船のようです。そう言えば思い出した。昔バンクーバーに行った時のこと、早朝の船に乗って鮭を釣りに行ったのです。静かなバンクーバー湾から見上げる山々は紛れもなく美しかった。そんな感じの作品です。

2013年11月23日土曜日

Peel Session : Boards Of Canada


Peel Session : Boards Of Canada

Boards Of Canadaが98年に「Music Has the Right to Children」(過去レビュー)をリリースした後、英国BBCの名物ラジオ番組「John Peel session」で披露したライヴ音源。今回のリイシュー対象にはなってないようですが、iTunes Storeでも入手可能です。ちなみに番組ホストだったDJのJohn Peelは2004年に他界しています。

リリース当初は4曲収録されていたようですが、最終曲「XYZ」はサンプリング権利関係でリリース後に削除されたとのこと。現在収録されているトラックのオリジナルは、全て「Music Has the Right to Children」に収められています。勿論ライヴなので、アルバム収録バージョンとは異なっており、かすかな緊張感が伝わってくるのが興味深い。ヒップホップマナーに根差したエレクトロニカで、ピュアネスな音像がやたらと心地良い。アブストラクトヒップホップとエレクトロニカの垣根を行ったり来たり。特に2トラック目の「Happy Cycling」が素晴らしく、幾つものレイヤーが折り重なっていく様子が恍惚感を覚えさせてくれます。

2013年11月18日月曜日

In a Beautiful Place Out In the Country : Boards of Canada


In a Beautiful Place Out In the Country : Boards of Canada

「Tomorrow's Harvest」リリースに伴い、彼らの過去作品がリイシューされてます(と言っても半年も前のこと)。この作品は2000年にリリースされたEPで、98年リリースの「Music Has The Right To Children」、2002年リリースの「Geogaddi」のどちらにも収録されていない、いわゆるアルバム未収録曲。とは言ってもアルバムクオリティに劣るどころか、アルバムをも凌駕する内容の傑作です。

音像のぼやけたサイケデリックな世界に広がる、幻想的で牧歌的なメロディ。生暖かい乳白色のような電子の煙が、リスナーの心の深部に眠っているノスタルジアを喚起する。精神安定効果や催眠効果も抜群。この作品を聴いて、優しくも残酷な過去へのインナートリップに飛び立とう。

2013年10月31日木曜日

Tomorrow's Harvest : Boards Of Canada


Tomorrow's Harvest : Boards Of Canada

Boards Of Canadaが実に8年ぶりの新作をリリースした。その長い歳月はリスナーの期待値を高めるのに充分な時間だったはずだ。にも関わらず、彼らは謎に満ちたプロモーション戦略を次々に打ち出し、リスナーの飢餓感を更に煽り続けた。

まず今年4/20に行われた世界的イベントRecord Store Dayで、BOCの新作12インチシングルが世界各地のレコード店でひっそりと売られた。ロンドン、ニューヨーク、東京のレコード棚に陳列されたそれらには「------/------/------/XXXXXX/------/------」といった形で、XXXXXXのところに6ケタの数字が記載されていた。更にはYouTube、ラジオ、ファンサイト、ケーブルテレビといった各メディアでも、ランダムな6ケタ数字が次々と発見された(XXXXXXの場所は全て異なっている)。全部で36ケタの数字を或るサイトにパスワードとして入力すると、新作の発売日とタイトルが現われる仕掛けだ。

更には彼らのtwitterアカウントから「May 22nd 24:00 @ 1-23-10 JinnanShibuya-ku Tokyo」という情報がアナウンスされ、渋谷のスクランブル交差点で何がしかの手がかりを見つけようと、多くの人が深夜にもかかわらず集まった(僕は行かなかったけど)。そこで披露されたのが新作のPVだったというわけだ。かくも手の込んだバイラルマーケティングを通じて、僕を含めたリスナー達は晴れて新作を手にし、長いこと抱いていた期待を裏切られることなく陶酔し堕ちていく。

この作品は彼らが築き上げたフォーマットを逸脱することなく、しかも更に深遠なところまで到達しているようだ。前作「The Campfire Headphase」(過去レビュー)のような湖に漂う霧のような浮遊感、前々作「Geogaddi」(過去レビュー)にみられた目くるめく万華鏡の如きサイケデリック感は控えめだ。それと引き換えに提示されているのは「陰鬱になりきれない不安感」であり、「光に満ちていない煙った希望」だ。非常に奇妙なことなんだけど、不安を感じながら快楽性に満ちている、仄暗いのに仄明るい、という心象風景が浮かんでは消えていく。彼らの新作はリスナーの想像力を激しく喚起する、映像的な野心作といえるものだった。ただし喚起された映像は決して共時性を持たないだろう。この作品の謎解きはリスナーの中で延々と繰り返されるだろうけど、正しい解が得られることはないだろう。