60年代~70年代中期におけるブルースやロックンロールが呪術的であるように、この人の音楽を何度聴いても「悪魔に魅入られた」という形容詞が頭に思い浮かんでしまう。前作のレビューでも「ロックンロールに魂を売り渡した」なんて書いたけど、鬼気迫るようなグルーヴとソウルがここでも黒々と渦巻いていた。同時リリースしたウルトラLPと呼ばれるアナログ盤は多種多様なギミックが仕掛けられているようで、ヴァイナルにも同様のグルーヴが渦巻き状に彫られているということだ。
相変わらずアナログレコーディング手法やヴィンテージ楽器にこだわり、ブルースやカントリー、フォークといった米国ルーツ音楽を発展させて、最新型ロックンロールへと昇華させる技は他の追随を許さない。これまでは短期間レコーディングや一発録りによるスピード感を重視していたが、本作ではレコーディングに1年間を費やしたとのことで、練りに練られた完成度の高さが伺える。
デジタルレコーディングや配信マーケットが飽和状態になるにつれ、その反動がやってきたのかアナログ市場が活況になってきている。HMVが渋谷にアナログ専門店をオープンさせ、パイオニアがターンテーブルをリリースした。まさにアナログ市場の復権が叫ばれ、ロックンロールはリバイバルの兆しを見せている。その急先鋒となるのがブルーに彩られた本作に他ならない。繰り返し言うが、ここにはロックンロールの悪魔が潜んでいる。
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