2017年6月12日月曜日

Before the Flood (Music from the Motion Picture) : Trent Reznor and Atticus Ross, Gustavo Santaolalla & Mogwai



熱心な環境保護活動家として知られる俺たちのデカことレオナルド・ディカプリオ。そんな彼が気候変動の影響を追うドキュメンタリー映画が「地球が壊れる前に」です。製作総指揮は巨匠マーティン・スコセッシで、ナショナルジオグラフィックから配給されました。それにしてもこの邦題は何とかならないのかな。原題が「Before the Flood」だから気持ちは分かるんだけど、ボブ・ディランのライヴアルバム(『偉大なる復活』 - Before the Flood)にもかけているんじゃないの?

ここで言及したいのがサントラを手掛ける面々。「ドラゴン・タトゥーの女」や「ゴーン・ガール」、「ソーシャル・ネットワーク」といった数々のサントラを手掛けた説明不要の二人 Trent Reznor and Atticus Ross。そしてMogwai(!)とアカデミー作曲賞を受賞しているミュージシャン Gustavo Santaolalla という実に豪華な組み合わせ。静謐で耽美的で物悲しく、ポストロックとエレクトロニカの世界を完全内包している。僕の大好きな監督・俳優・ミュージシャンが揃っているので、この映画は見ないとダメだなぁ。



2017年6月8日木曜日

TROPICAL LOVE : 電気グルーヴ


TROPICAL LOVE : 電気グルーヴ

2017/3リリース以降、ひたすら聴いている4年ぶりの本作ですが、未だに違和感を覚えている。というか腹に落ちてこない。本人たちが「最高傑作」と評しているのに対して、個人的に最高傑作だと思っている「VOXXX」を越えていないと思っているからかな。確かに聴き始めの頃は「J-POP以来の衝撃だ!」と思ったんだけど、聴き続けるにつれて衝撃が薄れていくのを感じたというか。

VOXXX」や「J-POP」に見られる連続性や、塊としてのアルバムのアタック感はあるんですよ。でも何だろう、毒気がない、狂気がない、お金がない。その代わりに、先行シングルとしてリリースされていた「Fallin' Down (Album Mix)」から綿々と連なっていく流れの多幸感は素晴らしい。ああ、これって卓球のピエール瀧に対する愛情がピークに達しているから、「最高傑作」と言ってるのかな。

「人間大統領」を支えるKenKenのファンキーベースや、それ以降の曲でも顕著なマッシヴなキックは、明らかにEDMに異を唱えており、カウンターとしての機能を十分に果たしていると思う。特にタイトル曲なんかそう思う。でもやはり、クリーンになりすぎてる感は否めないヨネー。ああっ、限定盤に付属していた「お母さん、僕たち映画になったよ。」のライヴ映像はやはり最高ですよ。



2017年6月4日日曜日

麺 五六

人生山あり谷あり。当ブログを始めて11年以上経つが、4ヶ月以上もインターバルを置いてしまったのは初めてだ。「更新しないのか?」という問い合わせは一切なかったが(笑)、人生の谷間を彷徨っていたとだけ言っておこう。谷にいたからには、再び山を目指さなければならない。いや、頂上を超えるのですよ、Over The Topですよ、仏恥義理V(オーバートップ)ですよ!新たな二郎系の山を探して、川崎の小田栄に行ってきました。



2016年に開業したばかりのJR新駅「小田栄」から徒歩圏内にある、先日オープンしたばかりの新店。ネット上でにわかに盛り上がっていたので、思わずこのお店をドアノック。店構えからして、中華料理屋さんだった店舗を居抜きでオープンしたのでしょう。口元に控えめな笑みをたたえる店主が一人で切り盛りしていました。




小ラーメン(730円)の食券を購入し、渡した時点で無料トッピングのヤサイアブラを伝える。ニンニクは卓上に置かれているので頼む必要はなし。やがてご覧のような一杯が着丼。屈斜路湖を想起させるカルデラ湖のようになみなみ注がれたスープ、こんもり積まれたヤサイの山、急峻な絶壁を支える屈強なブタ、頂上に降り積む固形状のコラーゲンたっぷりなアブラ。征服欲をかき立てるに相応しい一杯ではないか。




まずはスープを一口啜り…ウメェェ!とアルプスの谷間で飼いならされたヤギのような雄叫びを上げる(心の中で)。クリーミーに乳化した豚骨由来のスープは優しさに溢れており、刺々しさを微塵も感じさせない。モヤシ中心のヤサイはシャキ加減が立っており、卓上のラーメンたれをちょいと降りかけながらしゃくしゃく食い進む。二切れぶち込まれたブタは1cmほどに厚く切られており、脂身部分はとろり柔らかく、肉本体部分は適度な固さが残されており、丁寧な仕事ぶりが感じられる(本来は更に柔らかいらしい)。コラーゲンなアブラをつまみつつ全体ボリュームを減らしたところで天地返し。するとグルーヴ感覚のあるガチリとした中太縮れ麺が噴出した。適度な固さとむぎむぎしい香りを感じながら、スープとのハーモニーを堪能。気づけばスープをごくごく飲んでいる自分に気がついたので、汁完は控えてごちそうさま。新店なのにこの完成度の高さ!一つの山を征服して、再び終わりなき旅へと向かうのであった。

麺 五六ラーメン / 川崎新町)
昼総合点-

2017年1月22日日曜日

Vulnicura Live : Bjork


Vulnicura Live : Bjork


2015年11月にラフ・トレードから限定リリースされた Bjorkの「Vulnicura」ライヴ盤。当然ながらその希少価値ゆえに瞬時ソールドアウト。その後 Amazon で販売告知されたものの、紆余曲折あり1曲減らして一般流通リリースされたのが2016年7月。ソロデビューして四半期が経とうとしているのに、未だ最先端で有り続け、世間の耳目を集めています。


本ライヴ盤の半数は「Vulnicura」の収録曲、残りは以前のアルバムから。以前の曲が何の違和感もなく溶け込んでいるのは、「Vulnicura」及び「Vulnicura Strings」をミックスしたArca や Chris Elms が関与しているからでしょう。有機的エレクトロニカの極北ともいえる、冷ややかで艶かしい音が増殖しています。オリジナルがやや内省的であったのに対し、本作では攻撃性やダイナミズムが感じられるのが素晴らしい。


Tracklist

01. Stonemilker (from Vulnicura)
02. Lionsong (from Vulnicura)
03. History of Touches (from Vulnicura)
04. Black Lake (from Vulnicura)
05. Family (from Vulnicura)
06. Notget (from Vulnicura)
07. Come to Me (from Debut)
08. Undo (from Vespertine)
09. I See Who You Are (from Volta)
10. All Neon Like (from Homogenic)
11. Quicksand (from Vulnicura)
12. Wanderlust (from Volta)
13. Mutual Core (from Biophilia)
14. Mouth Mantra (from Vulnicura)

2017年1月18日水曜日

COW / CHILL OUT, WORLD ! : The Orb



昨年10月にリリースされた The Orb 最新作は「キャリア史上最もアンビエントな作品」と銘打たれている。タイトルから言って The KLF の大名作「Chill Out」やピンク・フロイドの「原子心母」に対する何らかの回答、もしくはオマージュと取るのは自明。メンバーの Thomas Fehlmann が 「21世紀なんだから、みんな座してチルアウトするのがいいぞ、破壊的行動を続ける前にな(It's the 21st century and it seems like a good idea for people to sit back and chill the fuck out, before continuing to act destructively.)」とプレスリリースで語っており、アンビエントというよりはチルアウト的作品であるのは間違いない。

そもそもアンビエントとチルアウトに境目はあるのか?これは紛れもなく存在すると思う。アンビエントが無意識下の音楽であるのに対して、チルアウトは能動的鑑賞を促す作用を持っているからだ。ユーザの使用方法や感じ取り方によって左右されるものの、睡眠作用または覚醒作用のどちらかで定義付けされるとすれば、この作品は覚醒感に満ちている。

耳を澄ませばウルトラワールド的ダブ音響処理がなされながらも、牧歌的で多幸感溢れるサウンドスケープが累々と連なっているじゃないか。まぎれもなく90年から続いているイビサ的空間がここで再現されており、かつ世界へ変革を促すような振動に満ちている。盟友である Killing Joke の Youth、およびアンビエント界の巨匠である Brian Eno の実弟である Roger Eno も参加しており、ここ最近のチルアウト作品の中でも出色の出来に仕上げている。

※作品を聴きながら、隣に座ってる赤ちゃんを見つつ記事を書きました。この作品と赤ちゃんの組み合わせはとんでもない覚醒感がありました。

2017年1月14日土曜日

わたしが鳴こうホトトギス : 戸川純 with vampillia



年が明けてブログ更新意欲が全く薄れてしまったんですが、1/13(金)での恵比寿リキッドルーム 戸川純35周年記念LIVE「わたしが鳴こうホトトギス」を観ての衝撃を受けて更新する次第。

まずはこのアルバム、デビュー35周年を記念して2016年12月にリリースされたもの。「lilac」で共演した Vampillia がアレンジと演奏面で全面関与したセルフカバーアルバムで、個人名義では12年ぶりの新曲となる「わたしが鳴こうホトトギス」が収録されている。

これはもう新作と言っていいぐらいの刷新ぶりで、インダストリアルでノイズで甘美な Vampillia の演奏により過去の名作が完全アップデートされている。まずは「赤い戦車」の強烈なツインドラムで復活を印象づける。「好き好き大好き」では無垢な歌声から虹色のファルセットボイスを経て、ドスを効かせ「愛してるって言わなきゃ殺す」と脅す。「バーバラ・セクサロイド」や「肉屋のように」は Vampillia 抜きではこうならなかっただろう、美しい轟音が響くハードコアチューンへと変貌。「蛹化の女」では樹液のような粘着質インダストリアルビートが滴り落ち、現代モードへの目配せを忘れない。

「12階の一番奥」で孤独な魂を鷲掴みにし、「諦念プシガンガ」で純ちゃんの根底にあるであろう思想「諦め」を歌い上げる。「Men's Junan」ではロールしまくる吉田達也のドラムが甘美なヴァイオリンの調べ、唸りまくるノイズ、変貌し続ける純ちゃんのボーカルを支える。「わたしが鳴こうホトトギス」では「何年経つても鳴ひてゐやふ」と歌い続けることを高らかに宣言し、この曲を聴く度に涙が勝手に流れてしまう結果に。そして過去最高のピュアネスに満ちた「怒涛の恋愛」で再落涙。戸川純と vampillia が呼応し合った、邂逅のような化学反応を起こした傑作だと思う。

さて、前述のリキッドルームライヴは本当に素晴らしく、純ちゃんへの vampillia のリスペクト精神、純ちゃんを支え続けるオーディエンスの愛が満ち溢れた最高のライヴだった。途中でいきなりのうがい休憩で席を外し、残された vampillia の狼狽ぶりを見ても、それを支える観客たちの優しい眼差し。へろへろなMCで大丈夫かな?と固唾を呑んで見守るが、曲が始まった瞬間に会場の空気を一変させる純ちゃんのボーカル。「Men's Junan」でとちりまくっても演奏面でサポートするバンド。すべてが本当に美しくて、ライヴ中ずっと涙が止まらなかった。Twitterを見ると泣いていた人がかなり多かったことに気づく。間違いなく人生の美しい瞬間だったよ。

Setlist

01.わたしが鳴こうホトトギス
02.lilac 
03.赤い戦車
04.肉屋のように
05.好き好き大好き
06.蛹化の女
07.12階の一番奥
08.バーバラ・セクサロイド
09.諦念プシガンガ
10.Men’s JUNAN

アンコール

11.怒濤の恋愛
12.赤い戦車

2017年1月1日日曜日

らーめん 忍者


神田界隈に「世良田二郎三郎元信」の名残と思われる「ラーメン二郎 神田神保町店」そして「用心棒」と「影武者」という戦国浪漫トライアングルが存在するのは前に書いた通りだが、山手線外縁部にとうとう謎の刺客が姿を現した。その名は「忍者」。何故そのような屋号なのか?秋葉原界隈で着実に増加している外国人観光客へのウケを狙っているのか?外国人を二郎化することで世界進出を狙っているのか?忍者だけに狙いは全くわからないが、取り敢えず体制を整えて突撃した。




らーめん(730円)に無料トッピングのニンニクヤサイをお願いしたところ、平日日中の勤め人には不釣り合いな暴力的一杯が着丼した。キャベツ比率低めのモヤシ中心ヤサイはシャキ加減がちょうどいい按配。やや乳化したスープには背脂が溶け込んでおり、カエシがきりりと立っているインスパイア系王道の味だ。甘辛くで旨味もあって好感度のあるスープをヤサイに振りかけながら食べ進む。




一通りヤサイを減らして天地を返したところ、ごろりとした大ぶりブタが一塊表出。分厚いながらも柔らかく、味も染みていて食べ応えあり。麺はご覧の通り、ぐりんぐりんに捻れた極太凶暴系。ガチとした歯応えで噛みごたえも十分。麺のグルーヴを堪能しながらズバズバと食べ進めば、脳内に快楽物質が分泌されるのを覚える。先の「影武者」の関与が指摘されたり、ライバル店の謀略が取り沙汰されたりとネットでは様々な情報が転がっているが、まずは完成度の非常に高い一杯であることを確認した。


住所:東京都千代田区神田松永町17-3

らーめん 忍者ラーメン / 秋葉原駅末広町駅岩本町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2016年12月27日火曜日

AIM : M.I.A.



今年9月にリリースされたM.I.A.の5枚目のアルバム。本人曰く「最後のアルバムになる」ということだが、音楽活動は継続していくらしい。「アルバム」という枠に囚われず活動していくということであれば一安心ですが、ここでもアルバムというフォーマットが失われていくのに一抹の寂しさを覚える。ちなみにの話。先鋭的な政治アティチュードと、父親がテロ組織『タミル・イーラム解放の虎』メンバーで現在は戦闘中行方不明(Missing In Action = M.I.A.)という出自から、ここ最近は米国当局からも徹底的にマークされていた模様。

Skrillex、Diplo、ZAYNといったEDM/エレクトロ勢をコラボレーターに迎えているが、内容的にはこれまでの作品と比べてやや内省的なものを感じる。それはかつて自身が難民だったことと、現在のシリア難民問題がリンクすることにより、自己の内部へ向かった結果らしい。加えて、母親になったことも作用しているようだ。が、完成度は極めて高く、これまで培ってきたバングラビート〜ダンスホールの中毒性が効いている。

2016年12月22日木曜日

麺屋 登夢道 茅ヶ崎本店



湘南といえば「ラーメン二郎 湘南藤沢店」があり、茅ヶ崎では二郎インスパイア系の雄「菜良」が制している地域だが、昨今はやにわに混戦状態を呈している模様。というのも「麺屋 登夢道 茅ヶ崎本店」というお店が2014年に殴り込みをかけてきたからだ。他には平塚に「豚んち」という二郎系があるが次回の課題とし、まずは「登夢道」を訪問してきた。この界隈は住宅街ということもあって家族連れが非常に多かった。メニューは大別して味玉つき醤油味(登夢道めん)/みそ味/辛みそ味の3通りあったので醤油味を。麺量は大:1.5玉、中:1玉、小:半玉ということなので中をお願いした。730円也。




着席とともに無料トッピングを尋ねられたので「ニンニクヤサイ」をお願いしたところ、なかなか見目麗しい外観を誇る一杯が着丼。ロールしたブタはふわとして柔らかくてドリミーにとろけるが、もう少し肉々しいノックアウト感が欲しかったところ。ヤサイはクタ気味に茹でられたモヤシ中心だ。ニンニクは刻まれているというより、すりおろされたようなのでもう少し荒い粒度でも良かったと思う。



スープは「鶏ガラ豚骨系」を謳っている通り、ジャンク加減控えめのあっさりしたもの。麺は一般的な二郎系とは異なり、多加水でつるもちで柔らかくボリュームもそれほどではない。麺とスープの組み合わせが明らかに通常と一線を画しており、凪いでいる湘南の海のようにマイルドな味わいだ。…つまり悪く言えば「普通のラーメン」なのだ。総じて破壊力低めのファミリー向けで、それ故に二郎系の裾野を広げているのは確か。二郎系が一般的になっていくのは喜ばしいことだが、普通の人に訴求する二郎系は二郎系たり得るのか?という疑問が残ったのも事実だ。

住所:神奈川県茅ヶ崎市赤羽根95-2

麺屋 登夢道 茅ヶ崎本店ラーメン / 北茅ケ崎駅香川駅
夜総合点★★★☆☆ 3.1
昼総合点★★★☆☆ 3.1

2016年12月17日土曜日

Cheetah EP : Aphex Twin



Syro」以降に活動活発化している Richard D. James が突如としてリリースした最新作。80年代風の爽やかなジャケットを手がけるはデザイナーズ・リパブリック。

元々は Soundcloud 上での Richard の匿名アカウントが一部公開していた作品で、タイトルは英国のシンセサイザーメーカーである「Cheetah Marketing」に因んでいる模様。このメーカーが製造したアナログでヴィンテージなモジュール「MS800」を駆使しているそうなんですが、当方シンセサイザーに詳しいわけでもないので他作品との音色の違いはあまり分からず。そもそも虚言癖のある Richard のことなので、その情報が本当なのかすら不明。

確かなのは、復活以降の作品にも言えることなんだけど、音色がクリアかつ音圧が適切だということ。これは物凄く重要なことで、音の選び方が丁寧かつ無駄がないことがよく分かる。研ぎ澄まされているからこそ、作り手の意志・意図がダイレクトに伝わってくる。僕自身ここ最近はテクノ(特にIDM)へ真摯に向き合っているわけじゃないので、最新動向すら分からない状態なんだけど、一昔前に比べてシーンが一巡して落ち着いているように思う。本作はそんな停滞感のある IDM 市場に改めて喝を入れている。クリアに音が響き渡るからこそ中毒性が高く、脳内の隅々をクリアにする作用満点。ジャケットのように清涼感とユーモアが溢れ、下にある PV のように無邪気でありながら毒も持つ。本作によって IDM シーンがかつてのように活性化していくといいですね。

2016年12月14日水曜日

4EVER : Prince


4EVER : Prince


墓場荒らしビジネスに加担する気はさらさら無いんですが、殿下死後にリリースされたベスト盤を買わずにはいられない。ジャケットの美しさもさることながら、ブートレグ市場では有名だった未発表曲「Moonbeam Levels」が収録されているから。僕はブートレグに手を出さない主義なので、これは初めて耳にする曲。プリンス論で 西寺郷太 氏がプリンスの存在を「ショートケーキの上に納豆やミョウガをかけられた感覚」と書いたが、ご多分に漏れずこの曲も同じ感覚を兼ね備えている。 

「Moonbeam Levels」は1999レコーディングセッション時に収録された、ブレイク直前の変態エナジーが漲っている佳曲。いわば「Take Me With U」のようにラブリーでありながら捉えどころのない、殿下にしか作り得ないショートケーキ/茗荷ソングだ。

他に収録されている曲は「The Hits/The B-Sides」と大して変わらないけど、ワーナーと和解しているにも関わらず93年作品「Love Symbol」以降の曲が含まれていないのは理解に苦しむ。権利関係で未解決なところが残っているんだろうけど、これでは世間から「92〜93年頃にキャリアが終わった人」と思われてしまうじゃないか。殿下の闘争はこれ以降に先鋭化していったというのに。なお、音圧は従来のものよりも高くなっており、全体的なバランスが取れたものになっているのを申し添えておく。

2016年12月10日土曜日

「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック


「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック

この映画(過去の記事)を見終わって、腰が抜けるほどの衝撃と温もりを味わい、同じ週にもう一度観に行ってしまいました。映画をリピート鑑賞したのは人生2回目だと思う。広島弁は理解できないところがあったので、2回目は「日本語字幕版」を。2回目なんだから泣くわけないもんねっ、と舐めてかかっていましたが、オープニング曲「悲しくてやりきれない」が流れた瞬間に目から大量の水が(あちゃあ)。おいおい何だよ、映画に対する免疫ができているどころか、泣くという刷り込みができているじゃないか。それほどまでにコトリンゴの音楽は大きな役割を果たしているのです。

観終わってさっそくサントラを購入。まずジャケットが素晴らしくて涙(宝物にしたくなるレベル)。何度も何度も聴き返して、映画のシーンを思い出して号泣。何だろうねこれ、泣けるシーンはそれほどないのに泣いてしまう。ドリフ大爆笑のテーマで泣くなんて…くっ…(いや実は戦時歌謡曲の「隣組」)。終盤で流れる「みぎてのうた」、エンドロールで流れる「たんぽぽ」を聴いても涙腺決壊、困ったねぇ。すずさんは今どこで何をしているんじゃろうか。クラウドファンディングに参加した皆さんを紹介した後の、一番最後の最後が忘れられないねぇ。

2016年12月6日火曜日

麺や でこ


前の記事で「発展著しい武蔵小杉・新丸子エリアがラーメン激戦区となり」と書きましたが、シン・ゴジラが由比ヶ浜から再上陸して武蔵小杉のタワーマンション界隈に到達したのは有名な話。更には丸子橋まで投げ飛ばしてしまって、新丸子周辺は大丈夫なのかしら?と思ってましたが、前から注目していた「麺や でこ」は被害を免れた模様。らーめん/つけそば/まぜそばの3種を揃え、らーめんは醤油/塩/味噌の360度外交を繰り広げています。取り敢えずはフラッグシップメニューであろう特製醤油そばを注文します。1080円というなかなかいいお値段です。



ぱっと見ただけでもその味わいが鼻孔をくすぐる淡麗醤油系が着丼しました。薄く切られた豚ロースチャーシュー3枚と鶏胸肉チャーシュー3枚は期待を裏切らない。しっとりした味わい深さが食欲を増進させます。写真では見えませんが長い穂先メンマは実に柔らかく、味付け玉子は黄身が甘くて上質素材を使っているのがよく分かる。他に使われている具材は刻みネギや海苔など。




シルキーかつスムースな醤油スープは、淡麗ながらも丸みを帯びて奥深い。複数の醤油を使っているであろう複雑系カエシが、鶏ガラのコクと優雅なハーモニーを奏でているではないか。表面ツルリとした多加水ストレート細麺を持ち上げれば、上品でマイルドなスープがまとわりつき、口腔内に小麦の香りがそよいでくる。懐かしくもあり新しくもある、子供の頃に食べた昔々のラーメンに終わらない新次元感覚。これは深い、深いよ!常日頃ジャンクな麺ばかり食べていると味覚が麻痺するので、こういった麺を食べて味覚再確認するのがヨシ。神奈川淡麗系に終わりはないのを確認した。


住所:神奈川県川崎市中原区小杉町1-520-6

ホームページ:http://my-deco1.com/
麺や でこラーメン / 新丸子駅武蔵小杉駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年11月29日火曜日

For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder ? : The Pop Group



The Pop Group の新作がリリースされたので、80年にリリースされた不朽の名作誉れ高い本作を聴き返した。ちなみに僕が持っているのは2016年2月にリマスターリリースされたもので、それまでは永らく廃盤状態にあった作品です。オリジナルに収録された The Last Poets 参加トラック「One Out of Many」の権利関係で揉めていたらしいんですが、そのトラックを削除して「We Are All Prostitutes」が代わりに収録されています。元々は先行シングルとしてリリースされていた「We Are All Prostitutes」を収録することで、本来あるべき姿になったということですが、まあ細かいことは気にしないで欲しい。

デビューアルバムだった「最後の警告」がブリストルサウンドの原点を感じさせるダブ的作品だったのに対し、本作は不協和音によるアジテーションミュージックになっている。ファンクやフリージャズ、ノイズミュージックといった要素を注入したパンクなんですが、不条理に対する怒りや苛立ちがびしびしと伝わってくる。マーク・スチュワートのボーカルを聴いた当時の人は腰抜かしただろうなぁ、と思えるような絶叫と扇情にまみれています。メロディらしきものは在って無いようなもので、ジプシーの子供たちがキスをする象徴的なジャケットからは程遠い世界を作っています。これを聴くとピストルズですら甘く聴こえる、本気で戦っている音楽。

2016年11月25日金曜日

ぶたやま


発展著しい武蔵小杉・新丸子エリアがラーメン激戦区となり、その波が武蔵中原〜武蔵新城にまで及んでいる。新城といえば二郎インスパイア系「107」の牙城であったが、非常にわかりやすい屋号で殴り込んできた店が2016/11/11にオープン。その名は「ぶたやま」。通常だと730円のラーメンが、開店サービスとして500円で提供されていたので早速足を運ぶ(11/18でサービス終了)。ご覧の通り行列ができていたが、中には二郎系を知らないであろう地元のおばちゃん達も。おいおい大丈夫なのかい?
 




食券を渡すと同時に無料トッピングを聞かれたので「ニンニクヤサイアブラ」をお願いした。するとブタがヤサイの山を支える、店の名前に恥じない一杯が着丼した。ヤサイ山の頂にはふわふわしたアブラが積もっており、麓を流れるスープを振りかけて溶かし込む。ヤサイはキャベツ比率が低めだが、野菜高騰のご時勢なのでやむ無しと言ったところ。標準的な茹で具合のヤサイを順調に減らしていく。




ほぼほぼヤサイを減らしたところ、くるりとローリングしたブタが2枚現れた。ふわりとした柔らかさで好感が持てる美味しさだ。スープの上澄みには透明な油膜が張られ、甘辛く味付けされた醤油味がきりりと立った非乳化なもの。麺を引きずり出すと、捻れた太めゴワ麺が表出した。ガチリとしたグルーヴィな噛みごたえでG感覚も十分だ。厨房に目をやると菅野製麺所の文字が見えたので、自家製ではなくアウトソースしていることを確認。このあたりに老獪な戦略が感じられる。総じてバランスがよろしく、オープン直後なのに完成度が極めて高い。また再訪したくなる味の良さだが、もはや街を歩けば二郎系に当たる時代になったことに驚いてしまう。

ホームページ:http://butayama.com/
ぶたやまラーメン / 武蔵新城駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7

2016年11月21日月曜日

この世界の片隅に


この世界の片隅に

能年玲奈 改め のん が完全復活の狼煙を上げた本作を観てきました。独立に伴うごたごたで、表舞台からしばらく遠ざかっていたのをヤキモキして見ていましたが…やはり凄いね、のんさん。天賦の才があるとしか思えん。あまちゃんでは天野アキを演じるために生まれてきたんじゃないの?と思ってましたが、本作のすずさんでも同じことを思う。すずさんを演じれるのはのんさんしかいない。圧倒的な存在感を放っていた、のんにしか放てない輝きがあった。

戦時下の広島・呉を舞台にしたこの映画、非日常な時代でのささやかな日常が描かれていますが、ふんわりした色彩とタッチ、独特のペーソスを持った演出が実に心地いい。淡々と物語は進み、大切なものを失いながらも暦は昭和20年8月へとめくられていく。「あまちゃん」では3/11に向かって話が進んでいったけど、この話では8/6に向かって話が進んでいく。日本人が知っているその日へ、日常は進んでいく。

戦争が終わっても、淡々と日常は進んでいく。草花、虫、景色や食べ物が柔らかく描かれているからこそ、戦争の残酷さが際立ってくる。一秒一秒すべての瞬間が愛おしくて抱きしめたくなる。お涙頂戴な話じゃないんだけど、周りの人はみんな(僕も)ぽろぽろ泣いていたよ。観終わってから大慌てで原作を読んだけど、オリジナルに忠実なばかりか、世界観をさらに拡張している見事さに気づきました。この間の記事で「間違いなく今年最高の映画」と書いたけど、ごめんこっちの方が最高でした。

2016年11月17日木曜日

You Find The Key : 田中フミヤ


You Find The Key : 田中フミヤ


Unknown 3」以来8年ぶりとなる田中フミヤの新作アルバム。今回のリリースは名門 Perlon から。ベルリンに拠点を移して継続的に DJ 活動を行っており、またヴァイナルでの EP も散発的にドロップしていることからも、アルバムリリースが8年ぶりだったという事実に少々驚く。


このアルバムで鳴らされているのは Ricardo Villalobos の影響を多分に受けたオーガニック感覚に溢れたミニマルの極北。テクノというタームさえ似合わない有機的な香りが漂っている。粘着的でパーカッシヴな音と奇妙なヴォイスサンプルが混ざり合い、丸みのあるプロダクションによってストイックな音響空間が構築されている。


泥の香りがしながらも、なおかつハウスの残り香がかすかに感じられ、ジャズ的要素も僅かながらに注入されている。それでもやはりフロアユースでの前提で造られているからこそ、感情的な距離感が保たれている。キックとベースラインが実にファットで、相変わらず漢を感じさせる男前な仕上がりになっていた。


2016年11月13日日曜日

ラーメン 末廣家


ラーメン激戦シティ 横浜の中でも、終わりのない仁義なき戦いが繰り広げられているのが六角橋。この地区を制した店は神奈川県を制したも同じと言われている(かどうかは分からない)が、中でも際立った人気を誇るのが「末廣家」だ。家系総本山として知られる「吉村家」の直系というだけに、累々と流れる家系 DNA がここでも引き継がれている。行列ができていたが回転率が速いので、さほど待つこともなく着席できた。注文したのは中盛ラーメン(750円)に海苔(70円)をプラスして。麺は硬めでお願いした。
 



特徴的なのが薄く切られた特大チャーシュー。もも肉使用とのことだが、しっとりした食感ながらスモーキーな旨味も感じることのできる逸品だ。実に美味しい仕上がりなので、チャーシュー麺にすればよかったと軽く後悔する。ほうれん草は茹で上がりすぎず、新鮮さを保っている。とろりとしたスープは直系だけあって醤油塩分濃度が高めだが、とげとげしさはない。豚骨成分と鶏油の溶け込んだ旨味あるダシが、全体をがっしりサポートしている。鮮度の高い海苔をスープに浸して美味しく召し上がれ。




短く切られた酒井製麺の中太麺は、軽くボソ感を残しながらもモチリとした食感。噛みごたえを楽しみながら、卓上にあったすりおろしニンニクでスープの味をブーストさせる。海苔が演出する磯の香り、小麦が演出する大地の香り、ほうれん草が演出する畑の香り、豚骨スープが演出する農場の香り。これらが渾然一体となり、高次で拮抗しながらバランスを保っている。伝統の味を継承しながらも、チャーシュー等からも新しさを感じさせる味。近くにある「とらきち家」としのぎを削りながら、いい戦いを繰り広げている。


住所:神奈川県横浜市神奈川区六角橋1-14-7

ラーメン 末廣家ラーメン / 白楽駅東白楽駅
夜総合点★★★☆☆ 3.8
昼総合点★★★☆☆ 3.8

2016年11月9日水曜日

Back in Time : Judith Hill



アメリカ人の父親と日本人の母親(そして二人とも音楽家だ)を持つシンガー Judith Hill。マイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」に出演し、逝ってしまったプリンスの最後の恋人であったことでも知られている。プリンスは「THIS IS IT」を始めとする数々の場で活躍している彼女の才能を見出し、デビュー作のプロデュースを手がけ、ソニーから大々的にリリースする予定だった。ところがプリンスがフライング気味にハイレゾ音源を無料配信し、ソニーと揉めてしまう。リリースはしばらく見送られ、結果としてまずはiTunes等から配信リリースされ、やがて2016年になってプリンスのレーベル NPG から CD がリリースされたのだ。

今となっては新品の CD 入手も困難なようだが、内容的にはプリンスの手腕が光りまくる素晴らしいものだ。Judith のアカペラから導かれスライ風ファンクになだれ込んでいくリードトラック「As Trains Go By」、隙間の美学が追求されたファンキーチューン「Turn Up」(「皆さん盛り上がりましょう、準備してください」と日本語で語りかける!)、ドラムとストリングスのみの最小構成による(例によってベースレスだ)「Angel In The Dark」の前半でまずやられる。この3曲はプリンスしか作れないだろう。

やがてオールドスクールなメロウバラード、ソウルチューン、ブルース等で全体のバランスを取り、彼女のボーカルが幅広い範囲で適用可能なことを知らしめる。繊細すぎるのでもなく、豪快でパワフルなボーカルでもない。「Wild Tonight」で披露するようなエキセントリックなボーカルスタイルも対応可能。この作品はそんな彼女の魅力を十分に引き出すことに成功しており、プリンスのプロデュース力を改めて痛感してしまう。

MJ とプリンスの両人に才能を見出されながらも、二人とも逝ってしまうという不運に見舞われた彼女の胸中はどのようなものなんだろう。これからの彼女の更なる活躍を心から祈っている。

2016年11月5日土曜日

ラーメン 麺徳 東陽町店



仕事で東陽町を徘徊していた日のこと。永代通りをちょいと横に入ったところに改装中のラーメン店を発見した。青いブルーシート、赤い三角コーン、そして黄色い看板…。予定調和的な何かを感じ、思わず入店するとそこは二郎インスパイア系「ラーメン 麺徳 東陽町店」であった。何を隠そう(隠すまでもないが)、東陽町を訪問することが決まった時から脳内フラグがびんびん立っていたのは言うまでもない。開店間もない時間だったので私が初めての客。食券機で「ラーメン」(700円)を買うと、横で待ち構えていた店のおじさんが、すかさず野菜の量と麺の太さを尋ねてきた。野菜が多いと聞いていたので、ヤサイちょいマシの太麺をお願いした。




カウンターは席ごとに線が引かれており、番号が振られている。指定された席に座ると、刻みタマネギやにんにくといった薬味、カレーパウダーや辛味噌、胡椒、唐辛子といったスパイスが並んでいることに気づく。カスタマイズ自由自在というわけだが、着丼した一杯にはわずかながらのニンニクを入れるのみ。業務中につきニンニクは控えめにするのだよ。普通は入れないなどと野暮なツッコミは止めてほしい。それが漢というものだから。言い添えておくとソロ来店していた女子も散見できた。




事前情報によりヤサイの量を控えていたが、これだったら野菜大盛でも難なくイケたと思う。クタ気味でモヤシ比率の高いやつらを胃に回収し、天地を返せばエッヂの立った平打ち太麺が出現した。ガチとした歯応えを感じつつ、ズバズバ食らうが全体量は控えめに思えた。豚は大型で平べったい奴が一枚入っており、バラ肉のフワトロさではなくロースの肉々しさを感じた。スープは豚骨成分が溶け切っているのでとろみがあるが、塩分控えめで割とライトな味だ。ただし奥行きと深みという立体的な次元を感じさせる、とげとげしさの少ない高得点スープ。途中で刻みタマネギを加えて、スッキリした味付けに変化させる。とろりとした上澄みアブラを回収してご馳走様だ。仄かにニンニク臭を漂わせながら午後の仕事場へと向かった。


住所:東京都江東区東陽3-15-3

ラーメン 麺徳 東陽町店ラーメン / 木場駅東陽町駅
夜総合点★★★☆☆ 3.7
昼総合点★★★☆☆ 3.7