2013年4月13日土曜日

21 : Adele


21 : Adele

売れている作品と優れた作品は必ずしも同じじゃない。2000年前後からその傾向が強くなってきたので、売れている作品にはどうしても懐疑的になってしまう。だからこのアルバムがとんでもなく売れているのを横目で見、敢えて敬遠していた。そんな中で去年、ドラマ「息もできない夏」で使われた「Set Fire To The Rain」を耳にした時、心の底から衝撃を受けた、本当に。これまでAdeleを敬遠していた自分を呪った。

2011~12年と2年連続世界で最も売れたアルバムとして知られていますが、凄いのはセールス成績のみならずその内容。フー・ファイターズのデイヴ・グロールをして「どのアルバムもアデルの『21』並みによければ音楽業界は絶好調になる」と言わしめ、オジー・オズボーンですら「アデルとコラボできたら幸せに死ねる」と言い出す始末。太り気味な彼女を揶揄する声に対して、マドンナでさえ「アデルはすばらしい才能があるし、それと彼女の体重は何も関係ないじゃない」と擁護する。ここまで大物アーティストから絶大なる支持を集める新進ミュージシャンも珍しい。

一人の男性との失恋体験によって作られたこの作品は、深い哀しみとそれによってもたらされる心の荒廃が描かれています。艷やかで管楽器を思わせるハスキーな歌声はソウルとブルーズに満ちており、作品を通してリアルな心情とエモーションが丁寧に描かれています。歌を聴いて涙が出てきたのってどれだけあるだろう?「ジョンの魂」を高校生の時に聴いた以来?それぐらいの名盤になっています。きれい事だけじゃない、別れた男に対する憎しみや複雑な感情。僕でさえ魂が揺さぶられると思えたんだから、女性はもっと共感するんだろうな。何せ「雨に火を付ける(Set Fire To The Rain)」ほどの激情なんだから。

ソウル、ブルーズ、フォーク、ゴスペルといった米国ルーツ音楽を基礎に、切々と心の襞に染みこんでくるかのような彼女の歌声。それを支える演奏も素晴らしく「Rolling In the Deep」や「Rumour Has It」のドラムは白眉。

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