2013年3月20日水曜日

夜半解体 : KANAMORI


夜半解体 : KANAMORI

金森達也 aka DJ Shufflemaster が遂に新作をリリースしました。DJ Shufflemaster 名義でリリースした「EXP」(過去レビュー )から実に12年経過しており、本作名義はその名も「KANAMORI」!!!(そのまんま!!!)。90年代半ばから佐久間英夫 氏(現在はかのTECHNIQUE を経営)と共にレーベル「Subvoice」で共闘を企て、その後は自身のレーベル「Housedust」を設立し、前述したアルバムを Tresor からリリースして世界的アーティストとなりました。しかしその後はぷっつりと新作リリースやDJ活動を控えており、世捨て人にでもなったのか?と思っていたところに今回のリリース。どうやらその間は「TOGA 」というアパレルブランドを立ち上げていたようで、こちら方面で多忙を極めていたようです。

ともあれ、このアルバムは新しく立ち上げたレーベル「四季協会」からのリリースとなるもので、2LP+CDという形態。しかも12"アナログリリースにありがちな、ぺらっぺらでヤワなジャケットなんかじゃない。アナログ世代が感涙に咽ぶであろう重厚感溢れるジャケットなのだ。まず帯がついてくるなんて想像もしていなかった。ジャケットは見開きで、フォトブックも付いている。歌舞伎町や横浜黄金町、大阪西成といった夜の街に蠢く人達。そんな彼らが背負っている業といったものが、写真で見事に表現されている。

さて内容はといえば、重厚感と疾走感があったかつてのハードミニマルとは大きく異なっている。いやこれはもうテクノの枠とか軽く超越しちゃっているエクスペリメンタル音楽。「Red Light District-Sex Reactor Zone1(赤線地帯・セックス原子炉 ゾーン1)」では乾ききったダブ音響が木霊したかと思えば、奇形化したダブステップのようなトラックに変異。タイトル通り、女の喘ぎ声がいかがわしいことこの上ない。「Vento Soffia Da Est,Una Sera Di Tokio (黄昏東京)」では多種多様なエレクトリックノイズが巧みにコラージュされ、後半に至ってはアシッドへと変形。「La Saison D'amour,Femme Odeur De Roses(ラ・セゾン 薔薇の香り)」はスタイリッシュでクールな音の上に、グリッチノイズが散りばめられた淫靡エレクトロニカ。「It seemed that they vanished among Maniac Love(人間蒸発)」では開放感のある美しいサウンドスケープが展開されたかと思えば、凶悪なエレクトリックギターが差し込まれ、最後は動物の鳴き声をコラージュした謎のアフロビートで終結。全編に渡って組曲のように捉えどころのないトラックになっているのがポイントだ。

もう一度言うと、これはフロア志向とは一線を画しているエクスペリメンタルミュージック。ジャケットのアートワークを手にしながら自分なりの世界観を脳内に構築するもよし。音楽を空間に溶け込ませて、意識の一部へ組み込むもよし。金森達也は異型のアンダーグラウンドミュージックを提示してくれた。

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