2015年4月25日土曜日

Vulnicura : Bjork



4年前にリリースされた「Biophilia」(過去レビュー)によって遥か孤高の存在へと上り詰めてしまった Bjork の新作は、これまでになく私的な香りが漂っています。カラフルな音色はすっかりと息を潜め、「Vespertine」や「Medulla」のような儚いトーンに彩られている。私的パートナーであるマシュー・バーニーと破局を迎えたとのことで、その別離の過程を本作品でなぞっているらしい。赤裸々に失恋の痛みと心情を歌い上げているんだけど、自ら経験した痛みをエモーショナルな作品として吐露するあたりは、さすが一筋縄ではいかないアーティストです。それにしても裂けてしまった胸を女性器のように表現しているジャケットって物凄いな。


さて、前述した「Vespertine」や「Medulla」のように派手な音使いは控えており、芳醇なストリングスと変則ヒップホップ~インダストリアルビートによって音世界が構築されています。ここでサウンドプロダクションに大きな貢献を果たしているのがベネズエラ出身の ARCA ことアレハンドロ・ゲルシ。若干24歳にして、Aphex Twin 以来の衝撃と騒がれているトラックメーカーです。変則的でマッシヴな異型ビートは生き物のように蠢いており、機械と人間が融合しているかのような薄気味悪さがたっぷり。カニエ・ウエストにまで惚れ込まれているという、次世代を担うアーティストの一人です。


エモーショナル極まりないビョークの歌声や艶めかしいストリングスに耳を奪われがちな作品だけど、耳を澄ませて ARCA が紡ぎだす変態的ビートを感じ取るのがよろしいかも。それにしてもキャリアの浅い若手アーティストを起用する触手や審美眼はさすが。 


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