2015年2月3日火曜日

Tomorrow's Modern Boxes : Thom Yorke



Radiohead のフロントマン Thom Yorke が昨年9月に突如としてリリースした 2nd ソロアルバム。「The Eraser」(過去レビュー)以来、実に8年ぶりのソロ名義となり、プロデューサーは切っても切り離せない存在の Nigel Godrich。リリース形態も相変わらず実験的で、BitTorrent という P2P ソフトウェアを通じての配信、もしくはヴァイナルリリースの2通り。過去に Radiohead の「In Rainbows」(過去レビュー)においてユーザが値段を決めるというシステムを導入し、音源販売の在り方に一石を投じましたが、今回は BitTorrent というテクノロジーの可能性を追求しているそうです。

BitTorrent クライアントが多いほどダウンロード速度が速くなるらしいんだけど、一般的なユーザにしてみたら iTunes などの大手配信サイトから購入するのが楽っつちゃあ楽。どうやらサーバ側の負担軽減が目的のテクノロジーらしく、配信側の目線に立った試みと言えるでしょう。サーバへの投資が抑止されれば、浮いた金がアーティストや価格により還元される、という仕組みです。

さて、内容はと言えば「The Eraser」のような脳へ直接作用する完成度の高いエレクトロニカとは異なり、Atoms For Peace の「AMOK」(過去レビュー)のような肉感的エレクトロニカとも違う。静謐で情感あふれる世界は変わらずなんだけど、音作りに安穏とした雰囲気を感じる。これは宅録感のあるシンプルな質感によるものなんだろう。幽玄としたアンビエンスと簡素でミニマルな作りに緊張度合いは感じられず、逆に解放感すら覚えてしまうのです。

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