2012年3月11日日曜日

Music for Daydreams : Ken Ishii presents Metropolitan Harmonic Formulas

六本木の防衛庁跡地にある東京ミッドタウンがオープンして、早5年が経とうとしています。六本木ヒルズのような派手さや複雑さを控えめにし、簡素かつスタイリッシュな空間を演出しているこの複合施設は非常に魅力的です。NYの代表的複合施設であるロックフェラーセンターをモチーフにしていますが、正面から眺めると建物全体がアシンメトリーになっています。日本庭園に据え置かれる石の「ずらし」を意識しており、宇宙の中心性を象徴する石組みを演出しているんだとか。施設随所にも日本的概念が取り入れられており、大いなる気を感じざるを得ない素晴らしい場所だと思います。

その東京ミッドタウンが「Tokyo Midtown Galleria Soundscape」というBGMプロジェクトを主宰しているんですが、これまでのプロデューサーである菊地成孔や細野晴臣から受け継いでいるのが我らがケン・イシイ。様々なアーティストの楽曲をチョイスしてクールな空間を演出していると同時に、このBGMプロジェクトの3作目として位置づけられるアルバムをリリースしました。しかも新たなる名義、新たなるプロジェクトとして。


Music for Daydreams : Ken Ishii presents Metropolitan Harmonic Formulas

ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、異種格闘技的に様々なアーティストとコラボレーションをし、テクノというジャンルにこだわらない音作りをしているのが本プロジェクト。結論から言うとまず素晴らしい。古典的名曲であるMr. Fingers「Can You Feel It」のカバーからこのアルバムが始まります。オリジナルに最大限の敬意を払いつつ、ベースラインをそのまま引用しながらも、菊地成孔のサキソフォンで艶やかにすることに成功。菊地成孔とはM10「Light in The Solitude」でも共演しており、夕暮れを思わせるメロウなチルアウトトラックを聴かせてくれます。Masaki Sakamotoと共演しているイタロハウスクラシック「Soft House Company」のカバー、日米で活躍するジャズボーカリストのEmi Meyerをフィーチャーしたファンキートラック「Equinox」、Alex from TokyoのユニットであるTokyo Black Starとの浮遊感溢れる長尺ハウス「Midnight Supremacy」、陽光が降り注ぐかのようなJazztronikとのコラボレーション「After The Rainstorm」など聴きどころ盛りだくさん。クラブミュージックの枠にとらわれない、ジャンル横断的に空間演出するリスニングミュージックとして出色の出来になっています。もちろんケン・イシイの特色ともいえる透明感のある電子音が綴られており、オリジナリティは決して忘れられていません。

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