2012年3月23日金曜日

極東慰安唱歌 : 戸川純ユニット

1984年リリースの本作も「玉姫様」(過去レビュー)に劣らず素晴らしい。


極東慰安唱歌 : 戸川純ユニット

「玉姫様」でやりたいことを出し切ったらしく、本作ではエンジニアに飯尾芳史、キーボードに吉川洋一郎を迎えてユニットとして新機軸を打ち出そうとしています。その甲斐あってか、「玉姫様」が豪華絢爛な作風だったのに比べ、本作ではソリッドかつミニマルな感覚に満ちています。タイトル通り、日本をテーマにした作品というだけあって、沖縄民謡や出身小学校校歌、戦後昭和歌謡風トラックなどが揃い踏み。

まずは冒頭の「眼球綺譚」では高橋幸宏が実にタイム感のある素晴らしいドラミングを提供。音数が少ないながらも極めてポップな名曲に仕上がっています。沖縄民謡の「海ヤカラ」では現地人と何ら遜色のない可憐なボーカルを披露し、「戸山小学校校歌~赤組のうた」では重たいインダストリアルビートが鳴り響く。アンデス民謡の「無題」でも音数をそぎ落とし、「極東花嫁」ではソリッドな80年代エレクトロ、「ある晴れた日」や「極東慰安唱歌」では牧歌的に展開し、「勅使河原美加の半生」でも重々しいインダストリアル、最終曲を細野晴臣の「夢見る約束」カバーで締め括る。この「夢見る約束」は「青い山脈」や「高校三年生」を彷彿とさせるような戦後歌謡メロディを使いながらも、80年代細野氏の面目躍如とも言えるテクノ歌謡に仕上がっています。なおCD化にあたってはボツネタだった「家畜海峡」と「人間合格」をボーナストラックとして収録。タイトルからして詩人だ。

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