2015年8月26日水曜日

Born in the Echoes : The Chemical Brothers



Chemsがデビューして早20年が経ったそうです。移ろいやすいダンスミュージックシーンに於いて、それだけのキャリアがあるということに素直に驚く。もっと凄いのが、本作でも作風が金太郎飴のように全くぶれておらず、世界遺産的なアイコニックビートに溢れていること。金太郎飴なんて書くと貶しているように思われるけど、一聴して Chems と分かる音色をそこかしこに配置して、なおかつリスナーの心臓をロックし続ける技は匠の域とも言える。今回もゲストボーカルをたっぷりと迎えて歌心も忘れずに。

「Galvanize」で客演した Q-Tip を再び起用したリードシングルを前半に据えて、いつものように聴き手のテンションをじわじわ上げていく。「Under Neon Lights」では今をときめく St. Vincent を召喚してサイケデリック感覚を際立たせ、、かつてのブレイクビーツを甦らせた「I'll See You There」ではアルバムのピークに。中盤以降でトーンを抑制し、Beck をフィーチャーした最終曲で感動的な大団円を迎える。この流れも今までの作品を踏襲したもので、ぶれてないどころか王道感がたっぷり。特に Beck の「Wide Open」はここ最近の彼らのトラックの中でも最高傑作といえるほど美しい。文字通り大きく開かれた情景が描かれ、最近の Beck の作風を色濃く反映している。ゲストボーカルとして Beck を単純にフィーチャーしているのではなく、Beck と Chems が完全に融合しているさまが素晴らしい。いつまでも中二みたいなロマンティシズムが満ちており、じんわりと胸が熱くなってくるアルバムです。

0 件のコメント:

コメントを投稿