2014年9月3日水曜日

ウィンターズ・ボーン

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アメリカン・ハッスル」という映画を観て、その完成度の高さにいたく感動したんですが、その中でもジェニファー・ローレンスの演技に強く惹かれました。彼女はまだ若干24歳ですが、既にアカデミー賞主演女優賞を受賞している実力派。そんな彼女が数多くの主演女優賞を獲得した映画「ウィンターズ・ボーン」を観ました。

舞台はアメリカのミズーリ州にあるオザーク地方。アパラチア山脈周辺やミズーリ州のような痩せた高地に住んでいる人たちをヒルビリーという蔑称で呼ぶそうですが、ジェニファー・ローレンス演じる主人公リーもその一人。ヒルビリーとはスコットランドの祖先を持ち、現代のアメリカにおいても氏族制度を護り続け、教育も満足に受けられない低所得者層を指すのだとか。貧困ゆえに伝統的に密造酒(最近では市販の風邪薬から精製する覚醒剤を密造)を生業にする人が多いそう。この辺りは映画評論家の町山 智浩さんが解説する映像がYouTubeにころがっているので参考にしてください。

17歳のリーは幼い弟と妹の世話を見て暮らしている。ドラッグ密売・密造人の父親は仮保釈中だが失踪中、母親は辛い暮らしに耐えられずに精神が崩壊している。そんな中、保安官がやってきて、父親が裁判所に出廷しないと家や土地が差し押さえられると告げる。困ったリーは親族や縁戚、知り合いに父の行方を尋ねまわるが、どうやら父親はある掟のために殺されたことが分かってくる。深入りするにつれて地元の長老一族からリンチを受ける羽目に…。

結末では父を殺した犯人は明かされない。父親が触れてしまったという掟が何なのかも明示されない。激情も溢れるばかりの感動もなく、物語は淡々と沈鬱に進んでいき、随所に埋め込まれたメタファーをじんわりと重々しく味わっていくしかない。中でも、生活の糧のために軍隊にまで入ろうとするジェニファー・ローレンスのタフな演技が素晴らしい。衝撃的なのがこの物語は現代アメリカでは普通に起こり得る話だということです。NYやLAのような大都会だけがアメリカではない。決して華々しい国ではなく、外国からは窺い知ることのできない暗部を抱える国。底辺に生きる人たちが大多数を占めるのがアメリカなのです。

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