2016年10月6日木曜日

Post Pop Depression : Iggy Pop



2016年早々に旧友デヴィッド・ボウイが逝ってしまい、「イギー・ポップ後の憂鬱」と銘打ったアルバムリリースを控えていたイギー・ポップは何を思ったんだろうな、と今更ながら考える。

今年3月にリリースされた本作は、ロックンロールの将来を占う上で非常に重要だ。プロデュースはR&Rシンジケートの中心人物ともいえる QOTSA の Josh Homme に託され、バンドメンバーには同じく QOTSA の Dean Fertita や Arctic Monkeys の Matt Helders が迎えられ、まさしくロックンロールの偉大な流れが継承されている。「Ready To Die」の時に「ロックは高齢者の音楽」と書いたが、かろうじてここで襷が渡されていると言っていい。

Josh プロデュースの引き算的美学が追求され、必要最小限の音がバカでかく鳴っている。そこかしこに本来のイギーが持っているアートの香りが散りばめられ、傷だらけになりながらも生々しく叫び続ける男の姿がここにある。骨太で重たくブルージーな演奏により、目に浮かんでくるのは荒涼とした砂漠の光景だ。

イギー自身が「最後の作品になりそうだ」と語る本作は、キャリアの中でも屈指の傑作と言い切っていい。単に荒々しいだけではない、円熟味が迸る一人の男がここにいる。イギー・ポップ御年69歳。残されたただ一人のロックンロール・ヒーロー也。

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